【STOP!自立訓練】成人年齢が近づいてきた重度知的障害児の親として注意すべきこと③

出典:いらすとや

こちらは以下の記事☟の続きとなります。

【STOP!自立訓練】成人年齢が近づいてきた重度知的障害児の親として注意すべきこと②

前回の記事では各制度及び区分判定について簡単に説明をしましたが、今回は判定の実態について書いていこうと思います🖐️

 

2か年計画で臨んだ「愛の手帳の成人更新」

18歳時の「愛の手帳成人更新」「障害支援区分判定」、20歳時の「障害年金受給申請」は、いずれも申請→審査→区分判定という流れになっていますが、その判定方法はそれぞれ微妙に異なっていましたよね。

愛の手帳

本人の知能検査と本人及び保護者への聞き取り調査等を行い、IQ(知能指数)を算出。そのIQをもとに軽度~最重度に区分し、判定を行う。

障害支援区分判定

調査員が本人の普段の様子を見るために学校等へ訪問、認定調査項目に沿って本人もしくは保護者への聞き取り調査、主治医に医師の意見書の記入を依頼し、それらの調査結果をコンピュータによる一次判定にかけ、さらに市町村審査会による二次判定にかけ、区分が決定する。

障害年金受給申請

本人もしくは保護者が病歴・就労状況等申立書を作成、医師に診断書の記入を依頼し、この2つの書類をもとに判定、区分(等級)が決定する。

うちの息子はまだ20歳になっていないので、障害年金については知人や先輩ママから聞いた話が元となっていますが、上記3つとも共通して言えることは、いずれも身辺自立していると判定が軽く出がちということです。

ただし愛の手帳の成人更新については、おそらく判定基準の大半を知能検査の結果が占めているかと思うので、身辺自立しているかどうか(本人や保護者への聞き取り内容)については、あくまでも補助的要素ではあるかと思います。

なので、愛の手帳の成人更新の対策としてはやはり、「いかに知能検査で悪い結果を出させるか」ということに尽きるかと思います😂

こう書くと何だか不正とかインチキを推奨しているように思われるかもしれませんが😂

違うんです。

これ、私の体感ベースなんですが、同じような経験をした人もいるので参考にしていただけたらと思うんですが、愛の手帳の更新って、12歳時よりも今回の18歳時の知能検査の方が判定基準が厳しい感があったんです🥹

え?基準が厳しくなるわけないよね?そういう性質のものじゃないでしょ?

と思われるでしょうし、実際18歳の方が厳しくなるわけではありません😅

ただ、知能検査というのは同年齢の子の平均値=100となっているため、いわゆる定型発達の子たちの12歳頃というと18歳の現在よりも知能の発達が著しく伸びているイメージがありませんか?

私の個人的な意見にすぎないかもしれませんが、小学校高学年~中学生になる頃、障害のある我が子と定型発達の子との知的レベルが信じられないほどのスピードでぐんぐん離れていってしまう事に焦りを感じていましたよね。

知能指数(IQ)は現在、偏差知能指数(DIQ)と呼ばれるもので表されることが多くなっています。

偏差知能指数は、統計的な処理をおこなうことで、同年齢の中で平均に当たる数値が100、約7割の人がプラスマイナス15の間に収まるようになっています。

偏差知能指数が70未満の場合、同年齢集団の下位2.3%の範囲にあたるため、知的な機能の面で困りが生じる可能性があるということで、「知的障害」の一つの目安にされることがあります。

ただし、あくまで知能の一側面のため、診断などに際しては、合わせて日常生活や社会生活への適応の度合い(適応機能)も併せて検討されます。

出典:知能指数(IQ)とは?測定でわかることや検査方法などを解説します【専門家監修】 (litalico.jp)

もちろん18歳になる現在はさらにその差は開いていますが、定型発達の子たちの6歳→12歳の伸びと、12歳→18歳の伸びを比べてみたときに、12→18歳は知識の質と量は格段に増えているかもしれないものの、基礎学力というか生活力的なものの伸びは緩やかになっているような気がするというか。

うちの息子の12歳時の愛の手帳の更新の際、何の準備もせず、前日もぐっすり眠ってのほほ~んと知能検査を受けに行きましたが、判定結果はIQ32程度(数値はなんとなくのものしか教えてもらえず)、めでたく中度→重度を勝ち取ることができたんですよね😂

やっぱりね、そうだよね、うちの子は重度だよねと思いましたよ。

ところが、今回の成人更新ではうちの息子、あわや中度に返り咲くところだったんです😂

「ぎりぎり重度ですね」と言われましたよ😂

え?うそーん!こんなに対策していったのに?

と、驚きを隠せませんでしたよね。

だって先輩ママや学校などからのように言われていたことを忠実に守っていたんですよ。

愛の手帳の成人更新の直前期には知能検査や発達検査を受けさせるべからず

直前(1~2年以内)に似たような発達検査を受けると、答えやパターンを覚えてしまって、本来のIQより高い数値が出てしまうことがあるから、ということなんですよね。

これが受験とかだったら高い数値を狙うところですが😂

愛の手帳は成人更新の今回が最後の判定となり、この際に判定された区分をもとに受けられる支援が決まるんです。

重度判定だと例えば電車やバスで障害者本人(息子)の運賃が半額になるけど、中度判定だと半額になるのは介護人のみ。

今後親元から離れて、息子がGHや施設で暮らすようになり、外出する際にも息子は毎回運賃の全額を払わなければならないんです。

もうお金を払ってあげる親がいないというのに😭

そこで今回の成人更新では何としてでも重度判定をキープするために、私は2か年計画で臨みましたよ😂

それまで年に1回ペースで受けていた知能検査を受けるのをやめました。

そして、それまで毎日のように頑張っていた学習(漢字・計算、時計、お金などの知育等)は、高等部に入ってからは一切やめさせました。

定型発達の子であれば漢字や計算などは日常的に使うため、あえて勉強させることなどなくとも忘れませんよね?

でも重度知的障害の息子は、学校では漢字を使わずひらがなだけしか使わなくても全く問題ないんです。

先生方もわざわざ漢字で書きなさいとは言いません。

親が意識的に使わせるようにワークブックやプリント類を日常的にやらせないと、忘れてしまうんです。

計算も、普通に生活している全く使う場面がないので、どんどん忘れていってしまいます。

それを忘れさせないように自宅でプリント類を頑張ってやらせていたんですね、毎日。

これは全部やめさせました。本人も好きでやっていたわけじゃないのもあって😂

重度知的障害のある息子には小学校低学年程度の漢字の読み書きや計算ができれば十分だし。

努力したところで学校の先生からは就労支援B型すら無理、生活介護事業所が相応しいと言われている息子です😔

これ以上、無駄に学習系を伸ばしても就労の足しになるわけもなく。

そこで、当面の間…愛の手帳の成人更新が終わるまでの間は、積極的に学習系のトレーニングはやめさせることにしたんです。

知能検査に漢字の書き取りや計算が出るわけじゃないですが、全く関係ないとも言えないんですよね。

例えばですが…知能検査の項目の中には調査員が唱える6桁の数字を復唱させる、というものがあるんですが。

これ、息子は12歳当時にはクリアできていた項目なんです。

ところが今回の成人更新ではできませんでした。

これは毎日のようにやっていた計算プリントをやめた影響かと思っています。

実は今回の知能検査は行動障害のある息子が一人で検査を受けることができず、私も同席させてもらったんですよね。

そこで見た息子の検査の様子ですが、想像以上にボロボロでした😂

12歳当時に病院で受けた検査の際にできていたことが、全然できなくなっていました。

ああ、これは余裕で重度判定だな。

そう思ったのにですよ。

実際はぎりぎり重度判定。

それもおそらく、保護者の聞き取り調査の際に、息子の行動障害について強くアピールした事が効いていたのでは?と思います。(行動障害について具体的な情報を箇条書きにして資料として持参していました)

知能検査の結果だけなら、もしかしてぎりぎり中度判定になっていたかもしれない。

恐ろしいな!と思いましたね😂

この2年間、あえて知能を伸ばさないようにトレーニングを控え、結果、検査内容もボロボロだったのに、12歳時の判定と同等、もしくは軽く出てしまっているっていうね😂

もしも対策をせず、毎日学習のためにプリントに取り組ませていたら、どうなっていたかと思うとゾッとします。

 

3つに共通する判定基準は「身辺自立できているか」

愛の手帳成人更新の際の聞き取り調査でも、身辺自立については機械的に質問がありました。

排泄、食事、着替え、入浴など、介助が必要かどうかということですが、息子にとっては、どれもこれも一人でできることばかりです。

ただ、これを「一人でできる」と言ってしまってはダメなんですよね。

「問題なく一人でできる」かどうかを考えたときに、排泄はできるけどトイレットペーパーを大量投入して詰まらせてしまう、致死量の調味料を大量投入してしまう、真夏に厚手の長袖の洋服を着たり真冬に薄手のシャツを着たりする、お風呂は追い炊きボタンを何度も押して熱湯のようにしてしまう、などなど。

見守りや監視が無ければ、場合によっては命の危険にもつながる行為もあるわけです。

これ、実は障害支援区分の判定や障害年金の申請の際にも同じことを問われるんですよね。

身辺自立はできていますか?的なことを。

その際ももちろん「一人でできます!」と胸を張って言いたいところですが、より手厚い支援を受けたいのであれば「一人でできる事も条件付きである」という点をきちんとアピールする必要があります。

そうでなければ判定が軽くなるだけでなく、障害年金においては年金をもらう資格すら失うことになりかねないからです。

障害支援区分や障害年金の区分判定の基準として、「身辺自立しているかどうか」という点を重視しているように思います。

支援が必要かどうかという観点に、身辺自立ってわかりやすい基準なんでしょうね。

でも身辺自立って、どの親御さんもお子さんが小さい頃から「将来困らないように」と頑張って躾けてきた分野じゃないですか😂

曲がりなりにも一人でできるように教えてきたんですよね。

トイレットペーパーを大量に入れないように、問題行動もきちんと補正するように口酸っぱく躾けてきて。

でも、完璧に躾ければ躾けるほど、親亡き後の支援が手薄になってくるんですよ😂

矛盾を感じます😔

 

行動障害は判定に影響するか否か?

愛の手帳については、聞き取り調査の際に行動障害(他害・多動・自傷・破壊行動など)をアピールすることで判定に影響を及ぼすことができたように思います。

ところが

障害支援区分については、そうは問屋が卸さないんです(゚з゚)

卒業後に生活介護事業所を利用したい場合、障害支援区分が「区分3以上」である必要があります。

ちなみに愛の手帳や障害年金の区分判定は、障害者本人の支援に直接的につながる判定ですが、障害支援区分は障害者本人というよりは、事業所の運営に直接的に関わる区分と言えます。

というのも、この区分によって国からの補助金(報酬)が変わってくるからです。

生活介護事業所における基本報酬を解説 | 障がい福祉事業の開業支援【大阪・京都・奈良】 (syogaifukushi-osaka.com)

上記の表を見ていただければわかりますが、区分5・6の単位の数が大きいですよね。

つまり障害が重ければ重いほど、報酬額も増えるということなんですね。

事業所側からすれば、入所した障害者の区分が5や6であれば報酬が多額になる=支援者をたくさん雇うことができる、ということになるんですよね。

ですが、区分3・4の障害者は区分5・6の人たちに比べて障害が軽いわけですから、手がかからない分、報酬が少なくてもいいのでは?とも思えますよね。

でも違うんです。

この区分、基準となるのは「どのくらい身辺自立ができているか?」という点が大半を占めているように思います。

出典:資料2-1 障害支援区分の認定を含めた支給決定の在り方について.pptx (mhlw.go.jp)

一次判定ではほぼ身辺自立の部分で判定しているように思われます。

二次判定でようやく行動障害や精神面などが考慮されるんですよね。

でも、あくまでも考慮されるだけであり、区分判定の基準は身辺自立の有無が大半を占めているのではないかと。

実際、強度行動障害があり、かなり手厚い支援が必要とされている障害者でも区分4の判定が出ていたりするんですよね😔

障害支援区分の判定において行動障害ももちろん考慮されていますが、割合が少ないのではないかと思われます。

そして行動障害のある区分の軽い子が事業所側に敬遠されるのは想像に難くありません😂

 

能力を伸ばす?手厚い支援を勝ち取る?見極めの時期が今

実際、区分が軽い重度知的障害時は卒後の進路難民になりがちです😂

高等部になると、あとわずかで社会に出るということから、「できるだけ一人でできることを増やす!」と、自立を促されるようになります。

ですが、促されるままに自立訓練をするのはちょっと待ってください。

愛の手帳の成人更新しかり、障害支援区分しかり、障害年金しかり。

どの判定においても、身辺自立がどのくらいできているか?ということは問われます。

このときに、完璧にできている!と答えるのは、この先の長い人生(特に親亡き後)においての支援を狭めていくことにつながるんです。

ですが、できているのに「できていません」と嘘をつくことはダメですよね。

となると、積極的に、完璧に「自立状態」に仕上げることは避けた方がいいのでは?と思うんですよね。

仕上げるのは障害年金の判定が終わってからでいいんじゃない?と。

もちろん、能力を伸ばすことで企業での就労につながることもあるかと思います。

そもそも知的障害の程度が軽く、あえて伸ばさないようにしたところで支援の内容に変化がない、という方もいるかもしれません。

状況は個人個人で違ってくるかと思います。

もう少し頑張って伸ばした方がいいのか。

あえて伸ばさないことで支援を勝ち取った方がいいのか。

特に中度と重度のボーダーあたりにいるお子さんは、どちらにするべきかよく考えた方がいいかと思います。

その上で、あえて頑張らせないという選択もあるのではないかと私は思います。

 

今回は中度と重度のボーダーあたりにいる知的障害児の息子のケースをもとに、私個人の意見を述べさせていただきました。

参考になるかどうかはわかりませんが、子供が16歳になった頃には「この先どんな人生を歩んでいくべきか」を、一度立ち止まって考えてみることをおすすめします。

 

 

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【STOP!自立訓練】成人年齢が近づいてきた重度知的障害児の親として注意すべきこと③” に対して6件のコメントがあります。

  1. 匿名 より:

    こんにちは
    なんだかなぁ~。。。
    全くもって理解しがたい。
    判定少しでも出来る方が良いだろう本人が一人で生きていくことを思ったら。
    何もできない方が扱いやすいと思っているのか?
    なんか変!一生懸命努力したら損みたい。
    ここらへんは今も昔も余り変わっていない事に驚き(⁠☉⁠。⁠☉⁠)⁠!
    改善していきたいものですね
    こーでした
    サナさんまとめためになるよ

    1. 稲倉サナ より:

      本当に、少しでもできる方が良いと思って一生懸命教えてきたことが裏目にでるなんて。
      特に障害年金は書類の書き方ひとつ、医師の胸先三寸という、なんともおかしな制度だと感じます。
      上手くやった人勝ち!みたいな。
      実態を知らないと支援を受けられない人も出てくると思うので、なんとかならないのかな~わかりづらい制度だな~と思います。

  2. えびコロッケ より:

    いつもためになる記事をありがとうございます。
    まさに今年、年金申請です。
    自立で改善してしまった案件があります。できるようになった息子に誇らしい気持ちになる反面、申請を目前にして「やっちまったぜ〜」と後悔する腐れコロッケです。そう思わせる制度が憎い〜〜

    1. 稲倉サナ より:

      うちは年金の申請はこれからですが、そろそろ準備をしておかないと、とは思いつつ何もやっていません(;’∀’)
      息子の状態としては現在最悪なので(笑)今の状態は判定に有利かと思いますが、問題は医師の診断書なんですよね。
      障害年金はやり手の社労士にお願いすると、知的障害の無い精神障害のみの人でも2級をゲット!みたいな話はよく聞くので、お金をかけてでもプロにお願いするのも手かなと。最初が肝心かな~と。
      土壇場で改善するのは嬉しいような悲しいような、ですね( ;∀;)
      本来なら絶対的に嬉しいはずなのに。本当におかしな制度だと思います。

    2. 匿名 より:

      お疲れさまです。難しい問題かと思います。介護認定で改善があると当然認定度が下がるのを想起しました。患者さんから愚痴を聞いたことがあります。良くなったらよいのでは?と思いますが、生活の補助は減ってしまうのがご自身は不満なんですよね。 
      子どもと高齢者では残された年月に違いはあるので、余計に悩ましいですね。

      1. 稲倉サナ より:

        そうなんですよね。
        改善されたからと言って、支援が格段に楽になるわけでもないんですよね。
        知的障害者の場合、区分が軽く出ても障害者本人にはあまり関係ないとおっしゃる方もいますが、区分が軽い手のかかる障害者は事業所側に敬遠されがちなんですよね。
        結果、障害者本人が不利益を被るわけで。
        そして障害者は成人してからの年月が長いので、本当に悩ましいです。

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