重度知的障害者が選挙で投票することの是非

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昨日は東京都議会議員選挙の投票日でしたね。

開票前から「微妙」と言われていたとおり、自民・公明両党の議席が過半数に及ばず、次回の衆議院選挙は波乱の予感しかありません。日本はこれからどこへ向かっていくのでしょうか。

…なんていう事は置いておいて、今回は投票所へ一緒に連れていった重度知的障害のある自閉症の長男について、また、重度知的障害者の選挙について、考えた事を書いてみようと思います。

 

重度知的障害児の息子も選挙の投票所へ

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昨日の都議選の投票には重度知的障害を伴う自閉症の長男・太郎も一緒に連れていきました。

太郎が選挙の投票所に行くのはもう何回目になるかな…というくらい、頻繁に訪れています😅

というのも、太郎は一人で留守番をさせられず(弟と2人で留守番するのも問題が起きるのでNG)仕方なく連れていくわけですが、今よりもっと小さい年齢の頃は、夫が投票する際は私が、私が投票する際は夫が、ロビーで太郎の見張り(見張っていないと投票会場に乱入してくる🤣)を担当し…という段取りでやっとこさ投票を済ませていました。

太郎が高校生になった今はというと、太郎は会場ロビーで一人で大人しく座って待てるようになりました✨

素晴らしき成長です😂

それでも家を出るときに、どこに連れていかれるのか「???」と思ったようで、「買物?」と太郎が質問してきたので、意味はわからんだろうなーと思いつつも「選挙」と。「選挙に行くんだよ」と、さらっと答えておきました。

そう言われたところで意味が分かるわけでもなく、それでも外出することは嬉しい太郎は、選挙!選挙!と言いながら付いてきました。

太郎が投票するわけじゃないんだけどね😅

けど、そんな太郎もあと2~3年もすれば選挙権が与えられるのです。

 

知的障害者向けの勉強会「選挙とは何か」

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実は数日前、NHK朝のニュース「おはよう日本」で知的障害者の選挙について取り上げられていたんですよね。

その際の内容が詳細に記事にUPされていたので貼りますね↓

知的障害あっても都議選に “できると信じて一票を” | NHK

知的障害者が選挙で投票することは、できるか、できないかで言えば「できる」。

例えばうちの太郎でも、投票はできますよ。

もしかしたら投票用紙に自分の名前を書いたり😂白票だったりするかもしれませんが。

どんな形でもよければ、投票はできる。選挙権は日本国民の当然の権利だから。知的障害があってもその権利は与えられる。

けど、選挙の意味もわからず、投票することに何の意味があるのか、と私は思う。

それは上記の「おはよう日本」を見て、さらにその思いが強くなったのです。

最初にお断りしておきますが、私は知的障害者が選挙で投票することを否定しているわけではありません。

むしろ、説明して理解ができる軽度の知的障害であれば、支援を受けつつ、しっかり投票を行って欲しいと思っています。

今回の「おはよう日本」で紹介されたのは、東京・狛江市の「知的障害がある人にも投票に行ってもらおう」という取り組みでした。東京都議会議員選挙を前に、知的障害や発達障害のある10代~50代までの5人に対し、「選挙とは何か」を学ぶ勉強会を開いたのです。

授業はイラストを中心に、選挙の意義や仕組みをわかりやすく紐解いて解説するもので、参加者は集中が切れる様子もなく、真剣な表情で聞いていたのだそうです。

この際、授業の参考に使われたのが、狛江市が作った手引き書「わかりやすい主権者教育の手引き」。狛江市が専門家や親の会、福祉作業所などとともに、去年発行したものです。

「給食のメニューを決める模擬投票をする。多数決で決まる仕組みを知る」

難しい選挙の仕組みを身近なものに置き換えるなどして、知的障害者にとって難しい選挙の仕組みなどをやさしく教えるための方法が詳しく解説されている冊子です。

この冊子も然り、この冊子を使った勉強会も然り、とても素晴らしい取り組みだな、と私は思いました。

太郎のような子であっても、給食のメニューでの模擬投票を行うことで、多数決で決まる仕組みを理解することはもしかしたらできるかもしれない、と思うからです。

身近で興味のある議題であれば、難しい内容も頭に入りやすくなりますよね。

こうした勉強会はぜひ知的障害児が選挙権を得る前のタイミングで、すべての自治体で行ってほしいとすら思います。

 

重度知的障害者が投票することの意味。公正に行える?

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ただ一方で、この勉強会だけでは片手落ちだと私は思います。

というのも、選挙の仕組みを理解することができたとしても、「誰に投票すればいいか」を理解することは難しい。

となると、毎回、選挙ごとに、誰かが(支援者が)、各候補者の経歴や政策、マニフェストなどをわかりやすくかみ砕いた資料を別途作る必要があると思うんです。

でも、それを誰が作るのか?そしてその資料には作り手の意思が一切入らないとは言い切れるのか

選挙であるから、こういう資料を作る際には公平性が求められますよね。資料を作る人が、自分が肩入れしている候補者(政党)に対して傾倒するようなことはあってはならないと思います。

もちろん作る人は公平性を意識して作るでしょうが、完全に公平に、というのは無理なのではと思わなくもない😗

また、こちらの記事の中にも出てきていますが、重度知的障害者の投票については、私は疑問しか感じませんでしたね。

知的障害あっても都議選に “できると信じて一票を” | NHK

この記事の中で紹介されていた重度知的障害者は、言葉が話せないけれども「好き嫌い」の意思表示はできる、というかなりコミュニケーションに難のある方です。テレビで投票の様子を見た感じでは、うちの太郎よりも障害が重そうだな、と。

投票の際には親御さんが候補者の写真を一緒に見てから毎回投票に行っているそうですが、正直、顔だけで決めて投票することに何の意味があるのかと思います。

記事の中には「知的障害者に正しい判断ができるのだろうか」と、判断能力を疑う声もまだまだあるといいます。と書かれてありますが、重度知的障害の母である私自身もまったくその通りだな、と思わざるをえません。

だって、太郎に候補者の説明をしても理解ができるわけもないし、そうなると結局は写真の顔を見て、その日の気分で投票…みたいなことしかできないのです。

「顔が好みだから」それの何が悪いのか?

健常者だって、政策を正しく理解して、投票できている人がどれだけいるのか?

今回の都議選では千代田区で平慶翔氏が当選していますが、極論を言えば、

サッカー選手の長友佑都さんが応援演説に駆けつけたから、「長友が好きだから投票しちゃおう」というのと、「候補者の顔が好みだから投票しちゃおう」というのと、何が違うの?同じじゃない?

…なんてことを言いだすと、重度知的障害者が意味も分からず投票することについて、何ら問題もないのでは?という話になるのかもしれません。

この記事に登場した重度知的障害者の親御さんはこんなふうに言ってました。

「私たちだって投票したあとに、『あなたの1票は正しいですか?』なんて絶対聞かれないのに、なぜ障害があるからといって、最初からできないって決めつけられたり、『それって本当に大丈夫?』って心配されなきゃいけないのでしょうか。この人を選んだっていうその人の選択が正しいので、それが正解なので、ほかの人と比べる必要はないと思います」

私はこの方の意見には賛同しかねますが、でも一方でこういう考えがあるということも否定はしません。

ただ、世の中の重度障害者の近親者が皆、この方のような考えであればいいのかもしれません。

でも、例えばですが、私が支持する候補者の名前を太郎に書かせる練習を何日かやらせれば、当日太郎にその候補者の名前を書いて投票させることが可能でしょう。

そういう操作も、やろうと思えばできてしまうということです。

 

選挙って、何なんでしょうね?

近い将来、太郎に選挙権が与えられる日が来たとしたら。

私はその時、どうするんだろう。

太郎でも理解できそうな資料をがんばって作って、本人に選ばせるのだろうか。

重度知的障害者と選挙。

難しい問題ですね。

 

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重度知的障害者が選挙で投票することの是非” に対して14件のコメントがあります。

  1. にゃんこ より:

    重度知的障害者が選挙権を持つことで、候補者の福祉への意識や働きかけに変化が出てくるかもしれない。
    それを思えば全く意味のないものではないかもしれない。
    悪用されるのは知的障害者ばかりではないし、やはり戸籍があれば選挙権が発生し、投票が当たり前になれば、制度や方法も改善されていくと思います。
    私は田舎の育ちで、選挙の結果が生活を一変するような場面を小さい頃から見てきました。
    もちろん色々と違うのですが、アメリカの選挙のような感じです。
    選挙戦も、政治や生活の変化も。
    本来なら個人で行われるべきものが、家族や親戚ぐるみ、組織票に票の売買。
    色んなことが起こっていました。
    重度知的障害者の選挙権に話を戻すと、制度上の間違いは正していけば良いし、まずは法の上では平等である事が一番先決なのだと思います。
    公的なものは理念が先で運用は後からついていくのだと思っています。

    1. 稲倉サナ より:

      太郎の学校でも生徒会の選挙があって、生徒一人ひとりが投票をするんですよね。
      そのときに先生曰く、太郎もちゃんと誰に投票するか考えてやっているようです、とのことでした。
      もしかして支援者がフォローすることによって、重度知的障害者であっても自分の意志で投票することが可能なのかもしれないと思いました。
      私が子供の頃は田舎に住んでいたので、やはり選挙はちょっとしたお祭り状態でした(笑)
      父方の親戚が出馬したときは私も選挙事務所に入り浸ったこともあります。
      日本は若者にとって選挙は身近なものではないイメージがあり、本当はもっと小学生くらいのときから選挙を身近なものとして学ばせるようにした方がいいのではと思います。
      障害者の選挙についてはそれから、という感じですかね。

      1. にゃんこ より:

        私も親戚が議員で、選挙中は両親かかりきりなので、選挙事務所で晩ごはん食べてました(汗)
        仰る通り、市長選の時は大変な騒ぎで、今でも覚えているのが、小5か小4の頃に市長選の結果で親が左遷される組と栄転する組に分かれて、ヒソヒソと結果について話をしていましたね。
        今と比べるとなんてませた小学生だったのだろう、と思います。
        高校生の頃には政治的な対立が遠因で親が失職し、友人が大学進学を諦める事件がありました。
        (週刊誌にも載りました)
        選挙に良い思い出がなく、上京してから結婚するまで一度も選挙に行く事はありませんでした。
        結婚後は毎回欠かさず投票しています。
        うちの知的障害児はフリースクール時代に模擬選挙のような事を体験しました。
        参観日で親も一緒に体験出来て、楽しい授業でした。
        生徒が立候補するのですが、好きな武士になって、選挙演説後に投票。
        織田信長や豊臣秀吉、徳川家康などになり、演説もそれなりになりきった内容で面白いしものでした。
        投票用紙も本物と同じ素材だったようでしたね。
        うちも、もう選挙戦の発生する年齢です。
        一緒に投票するのだと思いますが、定型長男と同じく、本人の好きなようにと伝えることになるでしょうね。

        1. 稲倉サナ より:

          好きな武士になって選挙をするのは楽しそうですね!
          私もやってみたいなぁ、ババァだけど(笑)
          そういうの大好きです。

  2. cosflo より:

    ちょっと関係ないかもしれませんが、コメントさせてください。
    私の父が意識不明の寝たきりになった時に、病院から電話が来ました。お父さんの不在者投票を病院で推している人に投票していいか?ということでした。私は衝撃を受けすぎて、どう言ったか覚えていません。母はきちんと考えられる人だったので、特養で投票したようです。妹は…。その頃の怒涛の時期の記憶がしっかりしていないのですが、そういう依頼もあったっけ?なかったかな?本当に選挙というものが分かっていない人に、投票をさせるのは、どういうものか?取り組みがあればいいのか?普通の人も同じようなものだから、いいのか?分からなくなります。どうなんでしょうね。

    1. 稲倉サナ より:

      やっぱり。そういう事ってあるんじゃないかと思っていました。
      私も今回の都知事選で、母親の知人が「娘さんに〇〇党に入れてくれるよう頼んでくれないか」と言われたらしいです(゚з゚)
      なんとしてでも1票欲しい方、いますよね。
      重度知的障害者の選挙は悪用されそうで怖いです。
      普通の人も大半はそれほど深く考えずに投票していると思うので、投票することに意味がある、という考え方もあるのかもしれません。
      難しい問題ですよね。

  3. まぬ より:

    こんばんは。
    アメブロ時代から良く読ませて頂いております。

    今回記事に「狛江市」のことが出ていて嬉しくなりコメントさせて頂きました。

    以前仕事の関係で狛江市の障害児を持つ親の会の活動に参加させて貰ったことがあるんですが、本当に熱心かつ精力的な保護者の方が多く、地域のいろんな企業にも取り組みを紹介していた覚えがあります。
    子ども達の為に何が出来るかと常に考えながらも、協力してくれた周囲への感謝の気持ちの表し方ですとか本当に皆さん献身的にやられていたので、そういった活動が結びついたのかなーと胸が熱くなりました。

    あれからかなり時が経ち私自身も知的障害のある子の親になりましたが、毎日ジェットコースターのような感情の波に飲み込まれています。

    いつもこのブログを読ませて頂き、勉強させて頂いてます。ありがとうございます♫

    1. 稲倉サナ より:

      なんと( ゚д゚)
      親の会の活動に参加されていたのですね!!
      まさにこちらの記事にある冊子が、親の会の協力でできていると書いてありますね!
      実際に障害のあるお子さんを育てている人の意見が取り入れられているので、素晴らしい取り組みができているのだと思いました。
      私も「おはよう日本」で紹介されなければ、狛江市のこうした取り組みを知ることはなかったと思います。
      親御さんたちの想いが形になって、こうしてニュースにまで取り上げられるようになって、胸アツですよね。・゚・(ノД`)・゚・。
      私も現在絶賛ジェットコースター乗車中です(゚з゚)
      泣いたり笑ったりしながら人間らしい日々を送っています。
      お互いがんばりましょう(=゚ω゚)ノ

  4. どん より:

    サナさんこんにちは。
    ご存じかもしれませんが、狛江市って自治体としては小規模かと思います。特に大きな企業や工場もないし(大病院はありますね)少ない財源の中でこのような取り組みをされているなんて、狛江、やるじゃん~!という感じです。私はお隣の調布出身です。
    なぜ独自に取り組めたのか。担当の方々のたゆまぬ努力に加えて、なにがそうさせたのか…
    先ずは隣接市区は参考にして頂きたい。ノウハウは共有して、出来るだけ多くの方に浸透するといいですね。

    1. 稲倉サナ より:

      狛江市小さいですよね!昔先輩が住んでいましたが、電話番号の市外局番が23区と同じ「03」で驚いていました←どうでもいいかつ古いネタ。笑
      小規模だから風通しがいいのかもしれませんね!素晴らしいですよね。
      その小冊子をぜひ他の自治体に配ってほしいと思いますが、きっと配られても活用できる自治体は(略)
      ノウハウの共有、ぜひぜひお願いしたいところです。

      1. どん より:

        サナさん、固定電話番号の03始まりは調布にもありますよ。今は分からないけど…
        世田谷に近い一部の地域の特権?私の実家は違いましたけど(笑)

        1. 稲倉サナ より:

          なんと( ゚д゚)
          調布も03始まりがあったんですね!あれはNTTの都合なのでしょうね。
          世田谷の恩恵恐るべし(゚з゚)
          そして、どんさんの実家残念!笑

  5. こー より:

    こんにちは
    政治家さん達大切な一票欲しいならこう言う所にも目を向けて動いて欲しい。
    今の現状では行きたくてもいけない人が多いのでは?

    1. 稲倉サナ より:

      狛江市のような取り組みを、他の自治体でもやってくれるといいのにな。
      こういう、”無くても別に困らない”支援は後回しになってしまいがちですからね~。

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