太郎、パトカー乗ったってよ。

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こちらの記事は2019年12月に書いた3つの記事を1つにまとめたものです。

現在「多動児」のまとめ記事を作成するにあたり、多動関連の記事を統廃合、加筆・修正しているところです。

「読んだことがある」という方もいらっしゃるかとは思いますが、あらためて読んでいただけると嬉しいです😊

 

息子が失踪した日の話

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その日は学校が休みで、夫と私、自閉症の長男・太郎、次男の4人で買い物に出かけていました。

行先は自宅から徒歩→バスで行ける場所にある、バスターミナルが目の前にある百貨店です。

夫は自分が買いたいものが6階にあるということだったのですが、私と次男は1階に立ち寄りたいショップがあったので、夫&長男チーム、私&次男チームで分かれることになりました。

1階のエスカレーターから上階に上っていく夫と太郎の姿を見送って。

その後、買い物を終えた私と次男は6階にいる夫の元へ行ったのですが、見ると夫はまだ熱心に洋服を選んでいる最中でした。

が、その傍に太郎の姿がみえないのです。

「ねえ、太郎は?」

私はキョロキョロしながら夫にたずねました。

すると夫は興味なさそうに言ったのです。

「エレベーターで遊んでるんじゃない?」

 

猫

はい?

いやいやいや、ちょっと待て。

確かに太郎、エレベーターが大好きな子です。

用もないのに上ったり下りたりを繰り返します。

太郎が誰も下りない階のボタンを押すこともあるし、太郎が乗ることで乗れない人がいる場合もあるし、

何より子供だけでエレベーターで遊ばせるなんて危ない!

 

うちの夫は時おり常識外れなところがあり、どうせエレベーターにずっといるんなら放っておいてもいいだろう、と放置していたのです。

「ちょっと待ってよ。もう20分は経ってるよね?いつからいないの?」

とたずねると、

「え?最初からだよ。エスカレーターで2階に着いたら一目散にエレベーターの方に走っていったから、どうせエレベーターで遊ぶんだろうなって思って、そのまま行かせたんだよ」

 

( ゚д゚)・・・。

 

何言ってんだこの野郎🤪

私は呆れて言葉に詰まりました。

そんな私の様子を見て、夫は気まずそうに言い訳を始めました。

「え、だっていつものことなんだよ。このビルに来たらいつもエレベーターで1人で遊んでるから」

いつもかよ😂

いつも放置してたのかよ!!

と、私は泡を吹きそうになりましたが、怒りの刃をおさめつつ、冷静に状況を整理することにしました。

 

それにしたって20分も!

さすがの太郎もエレベーターにとどまっているのかどうか。

不安を抱えつつ、私、夫、次男の3人はすぐさまエレベーターの方へ向かいました。

私と次男が1階、夫は6階、と手分けして、3機あるエレベーターをしばらく監視していました。

が、何度も上下を繰り返すエレベーターの中に、太郎の姿は見当たりません。

念のためビルで迷子の届けがないか確認したうえで、迷子のアナウンスもしてもらいました。

店内に響き渡るアナウンスが、なんとも不安な気持ちを煽ります。

だって、

言語発達遅滞のある息子にはアナウンスを聞き取る能力はありません😂

このまま待っていても出てくるはずもありません。

ひととおり店内を捜索した夫が戻ってきましたが、疲れたように首をふるばかりです。

もしかして私たちが帰ったのかと不安になり、バス停の方に行っているかも。

1階エレベーターの前に見張りのために次男を残し、夫はバスターミナルの向こう側にある交番へ、私はバス停を一つ一つ確認、と手分けして太郎を探しました。

太郎の名前を呼びながら。

でも、まるで神隠しにあったかのように、太郎の姿はどこにも見当たらないのです。

すると交番に行っていた夫が戻ってきたので「いた?」とたずねると「いない」と。

「もしかして…もうすでにバスに乗って家に帰ってるってことはないかな」

自閉症で知的障害もある太郎ですが、勘のいい子なので、帰ろうと思えば1人で家に帰ることもできそうな気がしました。

ただ、お金を持っていない…。

 

とりあえずまだ商業ビルの近辺にいるかもしれないので、その場に夫を残し、私と次男はバスに乗って家に戻ることにしました。

もし首尾よく家に帰れたとしても太郎は鍵を持っていないので家に入れないのです。

不安な気持ちに押しつぶされそうになりながら、私は次男とバスに乗りました。

バスに揺られている間、私は太郎が生まれてきてからこれまでのことを、走馬灯のように思い返していました。

いなくなってくれたら楽なのに。

そんなふうに思っていたこともあったよね…。

そしたら、本当に太郎がいなくなった。本当にいなくなるなんて。

いやいや、そんなことはない!

私は家の前で鍵を開けてもらうために立っている太郎の後姿を想像しながら、強く願いました。

きっと、帰ったら家の前にいる。絶対いる!

バスを降りた私は、はやる気持ちを抑えながら、家への道を急いだのでした。

 

「いなくなってくれたら楽になれる」

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いなくなってくれたら、楽になれる。

そう思っていたら、本当に太郎が消えてしまった。

 

私と次男は小走りで、自宅前の最後の交差点を曲がりました。

きっと、そこに太郎がいるはずだと信じて。

が、そんな願いもむなしく、家の前に太郎の姿はありませんでした。

「いないね…」

次男の不安そうな声に、私は絶望感で涙があふれそうになっていました。

もしかして近所をうろうろしているかもしれない、交番に連れていかれたのかもしれない、と思い、近くの公園やスーパー、交番などを探してみましたが見つかりません。

力なく、夫に電話をかけました。

もしかしたら見つかっているかもしれない。

夫の方も、商業ビル近辺で息子が行きそうな場所(過去に連れていったことがある他の施設など)を片っ端から探して歩いているはずでした。

「私だけど。…家には帰ってなかったよ。近所も探したけどいなかった。そっちは?」

「…どこにもいない」

時間を置いて再び駅前の交番に行ってみたが、やはり太郎はいなかったとのこと。

嘘でしょ。

これだけ探して見つからないということは、早い段階で誰かに連れ去られた可能性も否めない。

太郎は言葉もわからず、知らない人に連れていかれたとしても、騒ぐこともなく大人しくついてしまったことだろう。

信じられないけど、もしも本当に連れ去られてたとしたら…。

そう考えたところで、私は自分でも信じられないほど動揺し、体から力が抜けてガクガク震えはじめました。

もしそうだとしたら…

酷いことをされて泣いたりしていないだろうか。

怖くて怯えていないだろうか。

私は怯え泣き叫ぶ太郎の顔を思い浮かべ、ボロボロと涙を流しました。

もしこのまま、二度と会えなかったら。

ごめんね。

いなくなっていいなんていいなんて言って、本当にごめんね。

その時、自分自身の心に芽生えた思いに対しても、ひどく驚いている自分がいました。

息子がいなくなっても、何とも思わないんじゃないか。

むしろホッとするんじゃないか。

自分のことを悪魔だとか鬼母だとか、心のどこかでいつも自分自身を責めていたのです。

自分には母性がないと、母親としての劣等感にさいなまれていました。

それが、あんなに手がかかって大変な息子でも。

私より夫になついている、息子であっても。

いなくなるとやっぱり悲しいんだな、と。

太郎に対してそういう気持ちを持てたことがうれしかった私ですが、当の太郎はいなくなったままなのです。

遅すぎるよ…自分。

こんなことにならなければ、母親としての自覚が芽生えないなんて、本当に自分は馬鹿だと。

悲しみやらよろこびやら、いろんな感情が入り混じり、頭がぐるぐるしはじめたところで電話が鳴りました。

「もしもし」

 

太郎、パトカー乗ったってよ。

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その電話は夫からでした。

「見つかったよ」

え。

なんだって?

「え…えっと、どこにいたの???」

「〇×警察署」

〇×警察署といえば、息子が消えた商業ビルから1km以上は離れた場所にあったような。

「えっ、ええと、あそこから結構遠いよね?太郎はどうやって警察署まで行ったの?」

と、多少混乱しつつ夫を問いただすと、

「太郎、パトカー乗ったってよ」

 

( ゚д゚)は?

 

なぜいきなりパトカー?

夫の話によると事態はこんな状況だったらしい。

商業ビルの1階で、私&次男チーム、夫&長男チームに分かれてバイバイした後、夫と太郎は2階行きのエスカレーターに乗った。

が、2階に着くやいなや太郎はエレベーターへダッシュ。

夫は太郎が1人で遊ぶだろうと思い、自分は6階へ。

が、おそらく太郎の方は夫が後からついてきてくれていると思っていたらしい。

(太郎は言葉で説明ができないので半分想像です😅)

エレベーターで何往復かした時点で、いつまでたってもお父さんが姿を現さないと焦り始める。

焦った太郎は、家族に置いていかれたのでは、もしかしてもう帰ろうとしているのかも、と思い、バスターミナルへと走る。

バスターミナルでキョロキョロ探すがお父さんは見当たらない。

ここからは警察の人から聞いた話ですが、太郎はバスターミナルで、

「おとうさ~ん」「おとうさ~ん」😭と半べそかきながらさまよっていたそうです。

それを見ていた親切なご婦人が「ぼく、どうしたの?」と尋ねるも、「おとうさ~ん」「おとうさ~ん」と言って泣くばかりの太郎。

仕方がないので、ご婦人はターミナルの奥にあった交番へ太郎を連れて行ってくれたとのこと。

 

ん?

 

私「ねえ…。交番、ってさ、あの交番でしょ?」

夫「そうだよ」

私「太郎、交番にいなかった、って言ってなかったっけ?」

夫「いなかったよ」

 

???

 

つまりはこういうことだそうです。

交番は見た。

見たけど、太郎の姿が見えなかったのでいないと思った、と。

私「え?交番のおまわりさんに聞かなかったの?息子が来てませんか?って」

夫「うん」

私「見ただけ?」

夫「見ただけ」

 

あ・ほ・で・す・か ?

 

落ち武者

 

なんと、2回目に交番に行ったときも、ただ太郎がいないことを目視で確認しただけなんだと🤪

夫の愚行の裏で、太郎はどうなっていたかというと、以下、警察の方から聞いた話ですが・・・

 

交番でおまわりさんから「ぼく、名前は?」と聞かれた太郎。

「いなくらたろう」

ってえええ???

名前答えられたんかい😂😂😂

 

「ぼく、誰と一緒に来たの?」

「おとうさん」

じぇじぇじぇ!←ふるっ

太郎、普段は知らない人に名前を聞かれても答えられないし、「誰と一緒に来たの?」なんて高度な質問は意味がわからず、絶対答えられるはずもないんです。

え?自閉症、治った?🤪

なんだか、確保されたのが本当にうちの太郎なのかどうか怪しいけれど…

とりあえず見つかって良かった😭😭😭

 

結局交番では太郎からそれ以上の情報は引き出せないと判断、そのままパトカーで〇×警察署まで移送されたそうです😅

夫が最初に交番に行ったときは、すでにパトカーで連れていかれた後だったもよう。

太郎、初めてのパトカー体験😂

警察署では夫が迎えにいくまでのあいだ、椅子に座っておとなしくニンテンドー3DSで遊んでいたようです🤣🤣🤣

そして夫が迎えに現れた瞬間、太郎はニコリともしなかったとのこと。

さすが自閉症界のプリンス😂

感動の再開を期待していた夫は拍子抜けしたそうです😅

 

何はともあれ、無事でよかった。

が、二度と太郎から目を離すな!!!

と、夫にはお灸をすえておきました(゚з゚)

 

で、後日談。

この事件の影響で、2ついいことがありました。

あ、3つかな。

 

一つ目は、

太郎、ちょっと言葉が増えました💬

普段は他人に対して興味が薄く、言葉でのやりとりは皆無な太郎でしたが、黙っていたらこのまま一生家に帰れないかもしれないと思ったのでしょう。

あの交番での一件で、言葉を発することの重要性が少しは…理解できたのかもしれません。

二つ目は、

外出時に一人で勝手に消えなくなりました👍

これはトラウマになったのでしょう。笑

見える範囲に私や夫がいない場所に勝手に行かなくなりました。

 

三つ目は、

私の、太郎への感情の変化です✨

それまでは(息子が)いなくなってもいいと思っていたけど、本当は違った、ということがわかり。

自分自身の気持ちを確認することができて、なんとなくその後の生活でも、太郎のことを見守る目が少しだけ優しくなったような気がします。

でも…見つかったからよかったものの、本当に誰かに連れ去られていたこんなふうに笑って話せなかったと思うと、やはり多動児は常に監視していないとダメだと再認識しました😅

ちゃんと、自立できるその日までは、しっかり太郎を守っていかなければいけないなと。

気を引き締めなおしたのでした。

 

 

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太郎、パトカー乗ったってよ。” に対して6件のコメントがあります。

  1. 匿名 より:

    サナさん文章上手いわぁ〜
    久しぶりに拝見させてもらいましたが、電車の中で一気読みして乗り過ごしそうになりました。
    孫が、軽度知的の発達障害で手帳を持っていましたが、先月検査して外れました。
    でも、相変わらずこだわりが凄く疲れます。
    サナさんのブログで、スカッとさせてもらっています。
    いつも有り難うございます。

    1. 稲倉サナ より:

      ほめていただけて嬉しいです(=゚ω゚)ノ
      最近なかなか褒められる機会もなく、自己肯定感下がりっぱなしです(;’∀’)
      軽度知的障害だと検査で手帳が外れることもありますよね。
      手帳が外れることでまたいろいろ苦労もあるかもしれません。
      どんな人も、人生修行の連続ですね。
      こちらこそ読んでいただけるだけでも嬉しいのに、あたたかいコメントをいただけて本当に感謝しかないです。
      ありがとうございます(^^)/

  2. ママリンコ より:

    以前読んだ時に、太郎君ご無事で良かった❗サナさんも当時は生きた心地なかったと思うよ。でも、ほんま良かった(涙)
    うちのも突然いなくなる事があって、そして駐車場に停めていた車も無いし、あちこち探して、スマホも繋がらないし…って事1年に一度はあるかなぁ?あの半端無い心配感。もう泣きそうになり、探し回っていたけど、今はまたかぁーって感じ。何か分からんけどフラッシュバックして私に頭が来るんやって。
    都会ならタクシーやらバスやら使えるからエエけど、田舎で置いてきぼりされて、2時間歩いたわぁー(涙)
    一年に一度のクセお願いだから、田舎ではやめてー(涙)
    サナさん、最近愚痴ってばかりでごめん。
    ほんま、精神的にあかんわぁー。でも、仕事してる時だけで自分でいられてるから大丈夫。やっぱり逃げ道は大事だね。

    1. 稲倉サナ より:

      置いてけぼりで2時間歩くのは辛すぎます(:_;)
      フラッシュバックというと前触れもないし、対策も難しそうですね…。
      愚痴上等!
      たくさん吐いてください( ;∀;)
      私もブログに書くことで多少なりともスッキリしている気がします。

  3. こー より:

    こんばんは
    ご主人様動じない人?
    凄い!
    太郎くんやっぱり親の見ていないところでは、やっていけてるよ。
    いい経験だったんだよ。
    それにしてもサナさん、本出せるんじゃない。

    1. 稲倉サナ より:

      そうです!うちの夫、動じない人です(;’∀’)
      私はその点少し神経質なので夫婦でバランス取れている気もします(;’∀’)
      太郎は意外としっかりやれる子だったんだなぁと。
      いい経験だったと思います!

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