”親亡き後”に月々決まったお金を一生涯受け取れる!障害者扶養共済制度(しょうがい共済)
X(旧Twitter)で、親亡き後のお金の問題について話題になったので、よい機会だと思い、「障害者扶養共済制度」についての記事を書いてみようかと思いました。
自分(親)が亡くなった後に、知的障害のある子にお金を遺すべきかどうか悩んでいる方はとても多いと思います。子供が小さい頃は「知的障害があれば障害年金がもらえるから」…と漠然と考えてはいましたが、よくよく考えると障害年金の月額は1級2級ともに10万円未満です。また、企業の障害者枠雇用での給与や作業所の工賃も誰もがもらえるわけではなく、逆に、給与はもらえても障害年金が受給できない、福祉の各種手当をもらうことは見込めない等、知的障害者が自分自身の手当や稼ぎだけで生活費を賄うことは難しいとも思えます。
親と同居していれば家賃や光熱費、食費もかからないし、障害年金、各種手当や給与・工賃を全て生活のために使う必要はありません。ところが、家を出て、施設やグループホームに入居した場合は、場合によっては生活費が足りないということもありえますし、また、足りたとしても娯楽などに使うためのお小遣いまでは残らないこともあり得ます。
障害年金の受給の有無、障害年金の等級、福祉手当の額、給与や工賃の額、家賃補助の額など、総合的に計算してみると、人によっては案外何とかなる場合もあります。しかしこれも本人の障害の状態にもよるし、手当等は居住地によって制度が大きく異なるため、施設やグループホーム、一人暮らしを始めた後も、親が子供に何かしらの金銭的な援助が必要になる場合も少なくないと思います。
そう考えると、親が援助してなんとか生活が成り立っているような場合は、親亡き後にある程度まとまったお金を遺しておいてあげなければ、生活ができない、もしくは、生活はなんとかできたとしても、娯楽的なことがほとんど楽しめないような最低限の生活しか送れなくなってしまうのではないか。
かといって、多額の資産を子のために遺しても、子は自分でそれを管理し、適切に使うことはできない。そうなると、子の財産を管理してもらう人を見つけなければならないのか。そういう人がいない場合はどうなってしまうのか…。
知的障害の子に多額の資産を遺すことのリスク
おそらくですが、これまで自分で調べたり、経験のある方から話を伺った感じでは、親亡き後に意思能力のない知的障害者が多額の財産を持っている場合は、施設やグループホーム側から成年後見人を立てるように言われるケースが少なくないように思います。
その理由としては、多額の預貯金が何らかのトラブルで失われてしまった場合、事業所が責任を問われることになるからだと思います。また、ある程度の財産がある場合、生活保護を受けることができなくなることも理由の一つにあるかもしれません。
もしも入居者(障害者)にめぼしい財産がなく、障害年金や手当を足しても月々の収入よりも支出の方が上回るような事になった場合、障害年金の受給から生活保護の受給に切り替えることになるかと思います。ところが、本人にまとまった財産がある場合は、生活保護の申請をしても却下される可能性が高く、かといって、その財産を切り崩して生活費にあてていくというのを、親族(きょうだい児や遠い親戚など)が了承しない場合はどうなるのか、また親族がいない(身寄りがない)場合はなおさら、多額の財産の入った銀行口座を勝手に切り崩していくことにも躊躇するでしょうし、いずれにせよ、こうしたトラブルに巻き込まれたくないがゆえに、多額の財産がある場合は成年後見人を立てさせよう…となるのももっともかと思います。
そして成年後見人を立てると、これは実際に利用したわけではないので、中には「そんなことはない」「親身に世話をしてくれている」というケースもあるかもしれませんが、殆どの場合は「お金の管理」に徹して、「無駄遣いをさせないように」「必要最低限の支出で」「なるべく長く使えるようにお金を残していこう」とのような観点から、娯楽に関するお金も必要最低限しか与えられない…といったようなこともあるかもしれません。こうした娯楽に関する金額がどのくらい必要かということは主観的な価値観であり、成年後見人が福祉界隈にあまり詳しくない人の場合(弁護士などの士業の方などで、福祉関係に特化しているわけではない場合など)は、重度の知的障害者は頻繁に旅行や外出をするわけでもなく、できることも限られているだろうから、この程度のお金があれば十分だろう…などと勝手に判断されて、ちょっとした飲食代金程度を与えられるようなことになったら、いったい何のために多額の財産を子に遺したのか…ということにもなりかねません。また、成年後見人が障害者の財産を着服するようなケースも、無いとは限りません(「成年後見制度の現状」厚生労働省001488704.pdf)。
成年後見人制度については、我が子が実際に親亡き後世代になる頃には、もっと使い勝手のよい制度になっており、安心して利用できるようになっていることを願うばかりではありますが…。
親亡き後、子自身が亡くなるまで毎月2万円(or4万円)が支払われる
かといって、親が亡くなった際にめぼしい財産がなく、障害年金や手当だけでは生活費を賄うのが精いっぱい…となった場合は、結局は子にとっては同じことでは?と思うかもしれません。
そこで注目したいのがこれ。
障害者扶養共済制度
平たく言うと、障害者の年金です。といっても、いわゆる障害年金とは別物です。
この制度は障害のある人を扶養している保護者、つまり、うちでいうと、息子を扶養している父親(私の夫)が加入者(契約者)となり、加入者(つまり夫)が死亡・重度障害になった時から、息子に月2万円(もしくは4万円)の年金が支払われるようになるのです。それも、子本人が死ぬまで、一生涯。
障害者扶養共済制度
障害のある方を扶養している保護者が、自らの生存中に毎月一定の掛金を納めることにより、保護者に万一のこと(死亡・重度障害)があったとき、障害のある方に終身一定額の年金を支給する制度です。
▶制度の主な特色
*都道府県・指定都市が条例に基づき実施している任意加入の制度です。
*障害のある方1人につき最大2口まで加入することができます。
* 加入者(保護者)が死亡し、または重度障害になったとき、障害のある方に毎月2万円(2口加入の場合は4万円)の年金が生涯にわたって支給されます。
*付加保険料(保険に係る経費分)を徴収していないので、掛金が低廉となっています。
*掛金の免除制度があります。
*加入者(保護者)が都道府県・指定都市に支払う掛金全額が所得控除の対象になります。
* 障害のある方が受け取られる年金については所得税及び地方税がかかりません。また、生活保護を受給される場合にもこの年金は収入認定されません。
* 全国の都道府県・指定都市で加入でき、転出(引っ越し)した場合は転出先の都道府県・指定都市で継続できます。リーフレット:【リーフレット】
パンフレット:【パンフレット】[3.8MB]
概念的には、生命保険と年金を足して2で割ったみたいな制度、とでもいう感じですかね。
うちで言えば、知的障害者である息子を受取人として、父親であるうちの夫が生命保険に加入する感じです。そして月々、掛金(数千円~数万円)を支払う。夫が死亡(もしくは重度障害)すると保険金が支払われるわけですが、この場合に一般的な生命保険金のように一括で数百万~数千万円が支払われるのではなく、夫が死亡してから息子自身が亡くなるまで、息子は毎月2万円(もしくは4万円。掛金の口数による)を受け取り続けることができる、という仕組みです。
すごくないですか?
毎月、2口を掛けておけば、息子は死ぬまで毎月4万円を受け取り続けるわけですよ。
単純計算で障害年金が4万円増えるような感覚です。これは大きい!
えーでも、契約者の年齢によっては毎月数万円の掛け金が必要って、それ高くない?…と感じる方もいるかもしれません。
でも待って🫷
息子にはもう、この掛金の他に何一つ遺すつもりはないんですよ?
つまり、生前贈与みたいなものです。毎月数万円、積み立てていく生前贈与みたいなもの。
しかも、都道府県・指定都市が実施している公的制度だから安心感も半端ない。
申込みはお住まいの地方公共団体(都道府県・指定都市)の福祉課(障害者扶養共済制度担当)なんですから。
さらに、保護者が支払う掛金は所得控除の対象になるので、所得税・住民税の軽減につながります。
えっ、これいいじゃーん!
と、一瞬思いますよね?
けどこれ、加入するには条件があります。
まずは障害のある人を扶養しているということ。
それからこれ。
加入する時点の年齢が満65歳未満。
うちの夫はセーフです😂
そして、一般の生命保険と同じく、
加入者(うちの場合は夫ですね)が特別な病気や障害がなく健康であること。
これなー。
若い親御さんなら、あまり深く考える必要もないかもしれないけど、親御さんもいい年になってくると、いろんな持病やら深刻な病気やらに罹る確率も高くなっていくでしょう。
ですから、こういうのはまだいいわー。もうちょっと年とって切羽つまってから考えるわー。
なんて思っていたら時すでに遅し。加入できない!ということにもなりかねません。
ですから、自分たち親が健康なうちに、こういうことは検討しておいた方がいいということです。
加入者の要件(契約者の要件)
保護者の方の要件は、4つあります。障害のある方を扶養されている保護者であって、次のすべての要件を満たしている方が対象となります。所得がある必要はないので、例えば無職の方でもお申し込みできます。
①この県(もしくは指定都市)内に住んでいる
②加入する時点の年齢が満65歳未満である
③一般の生命保険に加入するときの条件と同じように、特別な病気や障害がなく健康である
④障害のある方1人に対して加入できる保護者は1人のみ障害者の要件(受取人になれる人の要件)
将来独立自活が難しいと認められる方で、知的障害の方、身体障害者手帳1~3級に該当する方、精神または身体に永続的な障害のある方(自閉症、統合失調症、血友病など)で知的障害や身体障害の方と同程度と認められる方、となります。
しかしね。
このあたりの条件をクリアして、さて、申込みOK!となったとしてもですよ。
これですよ、ちょっと、加入するー?どうするー?って悩みポイント。
掛け金。
掛け金がね、「加入後から20年以上」かつ「満65歳になった次の年度」という条件を満たす月まで支払い、その後は免除されます。
つまりですが、毎月いくら払わなければならないかはこちら☟
いつまで支払わなければならないか?についてはこちら☟
計算しやすいので、いったん、
夫60歳・息子20歳
という設定で計算させていただきます✋
例えば今月、この共済に契約したとします。
すると、うちの夫は月々23300円をむこう20年間支払う義務があるわけです。
つまり夫80歳まで😂
えっ、もうとっくにリタイヤ(定年)してるし😂
65歳で定年退職したとしたら、定年後15年間、年金生活なのに毎月23300円ってきつい😂
しかも月に23300円払って、息子が受け取る年金20000円。
減ってるじゃん😂
…と思うかもしれませんね。
いやでも、待って🫷
夫が掛金を払うのは20年。
もし夫がそこそこ長生きして90歳で死んだとしても、そのとき息子は50歳。
そこから20年分の年金を受け取ったとしてもそのとき息子はまだ70歳。
息子が長生きすればするほど、リターンが大きくなってくるわけです。
それにですよ、そもそも、そのお金を「親亡き後」のためにまとめて遺そうと思っていたのであれば、20年間払い続けるお金は、生前贈与みたいなものですから。なんとなく月々支払うものと考えると高いような気がしますが、
2万2300円×12カ月×20年=559万2000円。
親の死後に560万円ほど遺しておいてあげれば安心ですか?
私は、これだけじゃちょっと足りないような気がしますね。
それに、まとめて560万円を渡してしまうと、パーッと使われてしまうか、盗まれて無くなるか😂
そう考えると、息子自身が死ぬまで毎月2万円もらえるほうが、安心感があると思うんですよ。
ただし、途中で掛金が支払えなくなると、契約は無効になるし、一度契約したら、途中で脱退すると微々たる金額しか戻ってこない。子供の方が親より先に亡くなったら、微々たる一時金が出るだけ、といったリスクももちろんあります。
まあ、こういう点も「保険」の概念と似たようなところはありますね。
興味のある方はこちらでパンフだのをダウンロードして、熟読してみてくださいね。
年金を支給できない場合
以下の理由によるものについては、年金を支給できません。
1.次のいずれかの事由によって、加入者がお亡くなりになられた場合
・加入日(後から口数を追加された分については口数追加日)以後1年以内の自殺
・障害のある方の故意
2.次のいずれかの事由によって、加入者が重度障害状態になられた場合
・加入者の故意または重大な過失に基づく行為
・加入者の犯罪行為
・障害のある方の故意による傷害行為
・加入前(後から口数を追加された分については口数追加前)の疾病・災害
・ 加入者が加入前(後から口数を追加した分については口数追加前)に生じていた所定の障害状態、または加入前(後から口数を
追加した分については口数追加前)の原因によって加入者となった後生じた所定の障害状態を有していた場合において、すでに
障害を生じている身体の同一部位に新たな障害が加重したこと
3.加入者の生存中に障害のある方がお亡くなりになられた時
4.制度から脱退された時
生活保護を受ける場合にも「収入」からは除外されるのも◎
そして、この制度により支給される年金は通常の障害年金と併用して受け取れますし、受け取るお金には所得税、住民税、相続税、 贈与税がかかりません。
しかも、障害者扶養共済制度(しょうがい共済)により支給される年金は、生活保護の収入認定から除かれます。
これ重要!
もしも親亡き後、子の障害年金の等級が下がって受取額が激減したり、働けなくなって生活費に困窮した場合は、障害年金から生活保護に切り替えていくことになる可能性もあるからです。
生活保護は収入や財産をもとに給付するかどうかが判断されますが、この扶養共済で支給される年金については、生活保護の収入認定からは除かれる(判定の際の収入として含まれない)というわけです。
この年金をもらっているせいで生活保護が受けられない、ということはないので安心ですよね。
ちなみに、支給される年金給付金は以下のとおりですが☟
うちは2口で加入しました。つまり、夫が死亡した後は、息子は月々4万円を受け取ることになります。
親亡き後のお金の渡し方、遺し方については、いろんな考え方があると思いますので、まとめて遺すことが悪で、月々渡すことが善、というような話ではありません。
夫が長生きしたら、息子が早く亡くなったら、もとがとれない…みたいな考え方をする方には、向いていないかもしれません😂
そこは「共済」なので、困ったとき、万が一に備えて…という感覚で利用する方がよいかもしれません。
この扶養共済については、案外知らない方も多いので、今回記事にさせていただきました。
興味のある方はウェブサイトをしっかり読んで、無理なく支払っていけるかという点もきちんと確認してみましょう。
途中で支払えなくなったら、それまで支払った金額が無駄になってしまうので💦