自閉症とグループホームを題材にした映画「梅切らぬバカ」
ことわざ「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」とは?
樹木の剪定には、それぞれの木の特性に従って対処する必要があるという戒め。転じて、人との関わりにおいても、相手の性格や特徴を理解しようと向き合うことが大事であることを指す。
映画「梅切らぬバカ」とは
出典:映画『梅切らぬバカ』オフィシャルサイト 11/12公開 (happinet-phantom.com)
Twitterで観に行きたいと呟いたこちらの映画、ついに昨日封切りになりました😃
夫が自宅に戻ってきているので、自閉症の長男・太郎のお世話をお願いして、早速映画を観に行ってきました🖐
まずはこの映画の概要について。
『梅切らぬバカ』(うめきらぬバカ)は、2021年11月12日に公開された日本映画。監督は和島香太郎、主演は加賀まりこ。老いた母親と自閉症を抱える中年の息子が社会の中で生きていく様、地域の偏見や不和といった問題を取り入れながら、親子との絆や他の人間との触れ合いを温かく描いたヒューマンドラマ。
タイトルは「樹木にはそれぞれ特徴や性格があり、それらに合わせて世話をしないとうまく育たない」という戒めから転じて「人間の教育においても自由に枝を伸ばしてあげることが必要な場合と手をかけて育ててあげることが必要な場合がある」ことを意味することわざ「桜切る馬鹿、梅切らぬ馬鹿」から来ている。
一緒に笑って、たまに怒って涙して。
このありふれた毎日が宝物。
都会の古民家で寄り添って暮らす母と息子。ささやかな毎日を送っていたが、息子が50回目の誕生日を迎えた時に母はふと気づく。「このまま共倒れになっちゃうのかね?」
母親と自閉症を抱える息子が、社会の中で生きていく様を温かく誠実に描く本作。包容力あふれる母親を演じるのは、54年ぶりに主演を務める加賀まりこ。軽口を叩きながらも、小柄な身体で大きな息子の世話をする姿はとてもチャーミング。だからこそ、やがて訪れる“息子が1人で生きる未来”を案ずる横顔が、より一層切ない。息子役にはNHK連続テレビ小説「おちょやん」など俳優としても活躍中の塚地武雅(ドランクドラゴン)。地域コミュニティとの不和や偏見といった問題を取り入れながらも、親子の絆と深い愛を描き、あたたかな感動をもたらす。STORY
父親代わりの梅の木が運んでくれた“小さな奇跡”とは・・・
山田珠子は、息子・忠男と二人暮らし。毎朝決まった時間に起床して、朝食をとり、決まった時間に家を出る。庭にある梅の木の枝は伸び放題で、隣の里村家からは苦情が届いていた。ある日、グループホームの案内を受けた珠子は、悩んだ末に忠男の入居を決める。しかし、初めて離れて暮らすことになった忠男は環境の変化に戸惑い、ホームを抜け出してしまう。そんな中、珠子は邪魔になる梅の木を切ることを決意するが・・・。
私自身はこうした情報は事前に一切チェックせず、
・加賀まりこさんが主演
・塚地武雅さんが自閉症の息子役
・親亡き後に備えて息子をグループホームに入れようと考えている
という程度のことしか知らずに映画を観に行きました。
塚地さんの自閉症を演じる様が観たかったのと、今まさにグループホームに関することを知りたい、という気持ちがあったからです。
そしてこれも映画を実際に観てから知りましたが、塚地さんが演ずる自閉症の息子は50歳。
その年齢まで親子2人で一緒に暮らしてきたんですよね。そこまで長い時間を共にしてきてからの別離は、さぞかし寂しく哀しいものでしょうよ・・・と思い、
これは泣ける、絶対泣けるはず😂
・・・ということで、涙活(るいかつ)も兼ねて、ハンカチを握りしめて映画館に向かった私でした🖐
映画を観て思う率直な感想(ネタバレあり)
ここからはネタバレのオンパレードなので、知りたくない!という方はご自身が観終わった後におこしくださいm(__)m
映画館に来るのは半年ぶり。名探偵コナン「緋色の弾丸」を観に行って以来となります😆
私が観たのは封切り2日目の午前中の回で、朝だからかもしれませんが人はまばらでしたね・・・。席は3分の1も埋まっていない感じ。
年齢層はぐっと高めでしたね。60~70歳代がターゲット層なのか?というくらいで、あとは私と同年齢ほどの女性ばかり。
加賀まりこさんと同年代の方は男の人も結構多かったです。夫婦でいらしている方も。
きっとここにいる方のほとんどが、実際にお子さんが自閉症なんだろうな、と思いました。
そして映画を観始めたらきっとあちこちですすり泣きが始まるのかな・・・なんて思いつつ、私もハンカチを手に、スタンバイしました。
さあ来い!いつでも泣いてやるぜ😂
・・・と意気込んだ私でしたが、なんとまあ、肩透かしですわ😲
泣けませんでした😗
厳密に言うと、涙ぐむシーンはありました。
息子がグループホームに入る日の場面とか。
でも、概ね、なんていうか・・・。ドキュメンタリーを観ていた感覚なんですかね。
それもエンタメ要素ゼロの、めっちゃ、私たちの身近に転がっている感じの日常。
いつの間にか当事者感覚、それも母親目線ではなく、支援者目線で見てしまって、悲しいとか可哀想とかよりも、厳しい現実を目の当たりにした諦観みたいなものを感じました😔
哀しさより重苦しさが勝った映画でした。
塚地さんの演技がすごい!
まず、「きっと上手いんだろうな」と想像がついてはいましたが、塚地武雅さんの自閉症の演技が本当に上手でした。
途中から塚地さんではなく普通に自閉症の人として観ていました。
あれはおそらく重度の自閉症で、なおかつ重度の知的障害もあるのかなと。
重度知的障害を伴う自閉症の長男・太郎の様子にかなり近い感じはしましたが、おそらくうちの太郎より自閉度も知的にも重度。
言葉は断片的に単語程度しか発することができず、母親とはある程度の意思疎通はできるものの、他人に自分の行動や意思を理解してもらうことが難しい。
そんな状態にもかかわらず、移動支援などの支援者が付くこともなく、一人で外を歩いて作業所へ通っています。
母親(加賀まりこ)が高齢だからなのか、母親が付きそうことも無し。
そうするとやはり通勤途中で問題が起きるんですよね(゚з゚)
通勤途中に乗馬クラブがあるんですが、忠男(塚地武雅)は馬が好きで、フェンスの外側からじっと馬を見つめることが日課となっています。
これがオーナーは気に入らない。
忠男がくると仔馬が興奮する様子を見て、「忠男が仔馬を怖がらせている」と思いこみ、仔馬をかばうように抱きかかえながら「怖かったよね、怖かったよね」と叫ぶんです。
この件↑を思い出して胸が苦しくなりましたよ。
だから私は太郎を一人で歩かせたりしないんです。言葉で言い訳ができない太郎だから、私が守ってあげなくちゃ、と。
でも、きっと私も太郎が作業所に通うようになったらさすがに一人で行かせるよなあ。
そしたら私が知らないだけで、嫌な思いをたくさんするんだろうな、と。この映画を観ながら、将来の太郎のことを想像してちょっと鬱になりました😔
尻切れトンボの結末はあえての問題提起?
こんな感じで、わりと淡々と障害者の日常を描いている映画だったんですが、それなりにドラマもあり、グループホームに入居した後にちょっとした事件が起こるんですよね。
そのグループホームでは忠男が入居する前に住んでいた障害者が近くに住む子供の頭を叩いたことがあり、その件で近隣から苦情が入り、その障害者は退去を迫られたという経緯がありました。
しかし忠男もこのグループホームの入居後に近隣で問題を起こしてしまい、近隣住民がグループホームの前に集まり、拡声器での抗議行動を起こします。
グループホームがあると子供たちに何かあるのではないかと心配だ、安心して暮らせない、と。
グループホームがあるとうるさいとか地価が下がるとかまで言われてましたよ😂
グループホームには常日頃から苦情のFAXが山のように届き、近隣住民の対応に悩まされていたのでした。
結局忠男はグループホームを退去し、母親のいる自宅に戻ることになります。
いやー・・・。
このあたりの描写、実に重苦しかったです😑
これってきっと、南青山の児童相談所の件なんかも参考にしてるんでしょうね。
「一等地に似合わない」と反対された東京・南青山の児童相談所、4月開所へ ボランティアに応募多く:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)
太郎も将来、できれば住み慣れた自宅近くのグループホームに入れるといいなぁ、なんて思いつつ、映画でグループホームについてのヒントももらいたいという思惑もありました。
だから、この住民たちのシュプレヒコールのシーンに戦慄を覚え、この映画でこのグループホームは地域住民に受け入れてもらえるのかしら・・・と注目していたのに。
物語はまだこれからだよね、というところで映画のスクリーンにエンドロールが流れ始めた😲
え?まさかの終わり?😂
と、私が愕然とした瞬間、私の隣に座っていた女性が
えぇ~?
と、気の抜けたような声を漏らしていました🤣
近くに座っていた人、きっと全員心の中で頷いていたと思います😂
グループホーム運営の難しさを実感し、胸が苦しくなる。
結局映画の中ではグループホームの問題についてはなんの解決もないまま終わったんですよね。
グループホームの支援者さんが近隣住民から毎日のようにクレームを入れられ、頭を下げつつ、ホームの中では自閉症のこだわりがさく裂している利用者さんの世話に明け暮れて・・・。
私もグループホームの見学には何度か行ったことはありますが、実際に食事をするなど、生活している様子を見たことがなかったので、この映画を観て軽く衝撃を受けました。
忠男(塚地)が時間に関するこだわりが強すぎて、19時ちょうどにご飯を食べないと気が済まないため、全員揃う前に一人で食事を始めてしまったり、朝の7時ちょうどにトイレに入らないと気が済まないため、トイレのドアをガンガン鍵をガチャガチャ、他の利用者さんと揉めたりするんですよね😔
自宅で太郎一人の世話をするのも大変なのに、グループホームの支援者さん、ほんと、神・・・😭
この映画を観て、あらためてグループホームを作り、運営することの大変さを思い知りました。
土地の選定はただ単に価格のことだけではなく、近隣と揉めないことを念頭に置く必要があるし、建設する前には地域住民の理解を得るための説明会も必要で。
利用者さんと一緒に住む支援者さんの選定も難しいですよね。
障害に関して精通していることはもちろん、夜間も一緒に住める人じゃなきゃいけないわけで。
利用者さん同士が揉めないように、近隣に迷惑をかけないように、親代わりとなって細やかにお世話をしているシーンが映画の中でも出てきていましたが、本当に好きじゃなきゃやってられないと思います。頭が下がります😭
こうしたことの苦労の上に成り立っているんだと思うと、「障害者の当然の権利」と上から目線でサービスを利用としている方(親御さん)、ちょっとこの映画観てみたら?と思いましたよね😅
まー、そういう人に限って絶対観ないんですけど🤣
息子本人のためにもっとできることがあったのではと思う。
この映画、いろいろと思うところがあって、その最たるものが「母親」。
思うところというかモニョるところというか😅
加賀まりこさん演ずる忠男の母・珠子さんは売れっ子占い師の役で、なかなかのカリスマ性というか、言葉の一つ一つに説得力のある人なんですね。
キャラクターとしてすごく魅力的で、珠子さん自身は私もどちらかというと好きなタイプ。
無償の愛を注ぐタイプの人で、こだわりが強く扱いづらい息子のことが大好きでたまらない。
以前そういうタイプの障害児ママについて書いたことがありましたが。
忠男のことが可愛くてたまらず、50歳になってもなお、まめまめしく世話を焼く珠子さん。
眩しいほどの愛情を注いでいます。
でも、自閉症児の母親としては、どうかな~と思う部分があるんですよね。
きっと愛情が深いゆえに「ありのままの息子」を矯正することを試みず、そのまま受け入れすぎたのかな?と思うんです。
忠男には自閉症ならではの特性である「時間に関するこだわり」が強く、朝起きる時間、ご飯を食べる時間、トイレに行く時間(!)も決めていて、時間通りにできないと癇癪を起します。
朝ご飯はテーブルに並んだ食事が冷めても、時間がくるまで食べずに眺めて待っています。
珠子さんは口では文句を言いつつも、完全に忠男のこだわりに合わせた生活を送っているのです。
これってどうよ?
と思うんですよ、私は。
自宅で、母親と2人だけで完結することであれば「ご自由にどうぞ」と言うところですが、こうしたこだわりを崩すこともせず、50歳になってグループホームに入っても、生活スタイルとこのこだわりを崩すことはもうできないんです。
共同生活を視野に入れると、極端なこだわりはできるだけ幼い頃から習慣化させないよう、親が努力するべきだと私は思っています。
こだわり崩しは簡単なことではないです。私もすごく苦労してきましたし、いまだに崩せないでいる事もあります。癇癪を起されることもありますが、できればこだわりは少ない方がいい。でなければ集団生活ができず、施設やグループホームなどの受け入れ先の選択肢が狭まってくると思うんです。
せっかく入れても、入居者同士で揉めて退去とはなりたくないですよね😞
それともう一つ。
珠子さんは「障害者の権利」を主張するタイプの母親なんですよね(‘A`)
クレームを入れてくる近隣住民に対し、「障害なんだから仕方がない、受け入れなさいよ」と言ってしまうタイプ😂
それ、問題起こす側が言っちゃいけないやつー😂
と、少々冷や冷やしながら観ていました😅
加賀まりこさん演ずる珠子のキャラクターがあまりにも素敵なので、嫌な感じはしなかったんですけどね。
映画としてはこれくらいサバサバした女性でなければ重すぎるのかな、と思いつつも、映画だからいいけど身近にいたら嫌かもと思ってしまいました😅
50歳になるまでありのままの状態で好きにさせておいて、いきなり福祉に放り投げるのはどうかと。
親離れ子離れを考えると30歳くらいまでには離れて暮らす準備を始めておいた方がいいし、せめて時々ショートステイをするなどして慣らしたり、そこで課題を見出したり、そういう努力は必要だったのでは?と思わなくもない。
いろいろと、考えさせられる映画でしたね。
尺が短すぎて回収できていない問題だらけでしたが、問題提起こそがこの映画の目的だったのかとも思います。
できればですが、ドラマ化して、続きが観たいな😆
早速観に行って来たんですね。
私も観たいと思っています。
塚地さんの演技さすがですね!
えっ!って感じの終わり方は、非常にストレスになりません?ドラマから映画化すれば良かったのにー。
でも、サナさんがゆっくり映画を観る事が出来て良かったね。
子供の将来の為にも、親御さんの為にも支援サービスは若いうちから受けるべきやと。
こだわりがあるからこそ、いきなりのグループホームは厳しいですよね。
また、福祉施設設立するに辺り反対住民が出るのが私には理解出来ません。
自分だってこの先福祉にお世話になるのにね。
反対するのが普通の感情なんかなぁー?
ぜひ観に行ってください!
いろいろ書きましたが、加賀まりこさんのキャラクターがもう、本当に素敵なんです。
息子への愛情深さが眩しいほどで、ある意味盲目的に子供を愛せることが心底羨ましかったです。
ブログには書いていませんが、お隣りの家族とのふれあいや、グループホームの同居人とのやりとりなども見ごたえありますよ(‘ω’)ノ
えっ、という終わり方はちょっと残念ではありましたが、なんとなく確信犯だったのかな?と思わなくもないです。
息子が戻って来た後、もしかして珠子さんは住んでいる自宅を改装してグループホームを建てることになるのかも?という匂わせもありました。
壮大なネタバレすみません(;’∀’)
観ている人に、今後のあの親子とあのグループホームの行く末について、考えて欲しいという思いがあって、わざと尻切れトンボにしたのでは?と思っています。
とにかくキャストの方がみんな素晴らしく、観る価値は十分にあります!ぜひぜひ。
こんばんは
朝のNHKでやっていましたね宣伝!
塚地さん裸の大将もやっていたので、演技はなかなかですよね。
加賀さんは今現在一緒に暮らしている方の息子さんが自閉症と言うことで、大変さが分かると話していました。
まだ、観ていないので何とも言えないけど、いろんな人に分かって貰える映画だといいね。
塚地さんは本当に演技が上手でした。
よく研究されているな、と感じましたよ。
加賀まりこさんは義理の息子さん(事実婚とのことですが)が自閉症なんですよね。
映画でのお母さん役がこれもまた演技とは思えないほど愛情にあふれていました。
この映画はキャストの方が皆本当に芸達者で、見ごたえありましたよ!
ただ時間が短すぎましたね。
ドラマでやってほしかったです。
映画、気になっていました。
サナさんの感想お聞かせくださり
ありがとうございました!
映画を拝見してはいませんが、
50歳になるまでお家でご家族で
看る事が出来るのは、それはそれで
素晴らしいとは思いますが、
その後の事を考えると、外部(グループ
ホームしかり、ショートステイしかり)
を利用する為の助走期間は確かに
必要だなぁ、と改めて思いました。
私は、親が家にいるのに、ディサービスを使う
事にとても引け目を感じていて
(本人は別に何とも感じていないと
思いますが(^◇^;))預けたり送迎を
お願いする事を躊躇していたのですが、
やはり、親がいなくなった後に
上の子に全ての負担が行かない為にも
支援の手は多くある方が良いと思い
最近はなるべく利用するようにしています。
利用する側も利用される側も
気持ちよく時間が過ごせるように
今から子供のできる限りで
枝を良いタイミングで上手に
切ることが出来るといいなぁ〜なんて
思いました(^^)。
おかえりなさい(^^)
体調の方はいかがですか??
わかります、私も自宅にいるのにデイサービスを使うことに引け目を感じていました。
子供は喜んで行ってますけどね。それがわかってからは気が楽になりましたが。
学校の先生からはむしろ今のうちからもっと公的支援を使った方がいいと言われています。
親もいつまでも元気なわけではないから、と。
映画では結局グループホームを追い出されて自宅に戻ってきてしまって、この先どうするんだろうと気になって仕方がないです。
とても他人事ではないなと思いつつ、将来に向けて早めに動くことの大切さも痛感しました。