【重度知的障害者】親亡き後の医療費問題。国民健康保険料は障害者でも免除無し⁉

親亡き後の生活について、不安に思うことは多々ありますよね。
特に、知的障害が最重度・重度であり、障害年金以外に収入が見込めない場合の、生活における収支について。
親が健在で援助できるうちは心配ないかと思うんですが、心配なのは親亡き後ですよね。
月10万円にも満たない収入は、生活に必要な費用だけで消えていくのかな…なんて漠然と思っていたんですが、いざ、息子が成人し、障害年金を受給する年齢になったところで、親亡き後に生きていくうえで必ず支払う必要となるものが具体的に見えてきたんですよね。
そのうちの一つが、医療費。
病気やケガはもちろんですが、重度知的障害者の場合は、行動障害から、抗精神病薬を日常的に処方してもらっている人は多いかと思います。そして、これは健康保険適用されたとしても、月々の自己負担額は結構な金額になっていませんか?
もちろん、こうした医療費には助成制度があり、自立支援医療制度や、東京都ではマル障(心身障害者医療費助成制度)などを利用することで、本人の負担は最小限におさえることもできます。
特に、東京都の「マル障」などは、利用にあたり所得制限があるものの、20歳になれば本人の所得で利用の可否が判断されるようになるため、愛の手帳1度・2度の知的障害者で、本人が低所得であれば、医療費の自己負担がなくなるんです。
これは本当に助かる😂
しかし。
「親亡き後もマル障があるから大丈夫」なんですかね?
重度知的障害者は、病気やケガ、精神科の通院など、保険適用の医療費については一切お金を支払わず、医療費については特に備えなくても大丈夫なんですかね?
ところが、そうじゃないんです。
ということで、今回は親亡き後の、医療費について記事にしてみようかと思います。
ただし、申し訳ないんですが、今回は東京都の制度についてのお話となります💦
また、医療費の制度は自治体(市町村単位)によって異なるため、今回は申し訳ありませんが、東京都の平均的な自治体を想定した内容となります。
全国的に似たような制度はありますが、具体的にはお住まいの自治体がどのような制度を行っているかご確認くださいね。
また、今回は愛の手帳1度・2度の最重度・重度知的障害の方に特化した内容となります。
というのも、マル障は愛の手帳1・2度が対象となるからです。
マル障が使えない場合は、医療費の負担は大きく、医療保険に入るなどの対策が必要かと思います。
以前書いたぜんち共済の記事などもご参考になさってくださいね。
心身障害者医療費助成制度(通称:マル障)

そういえば子供が未成年の頃は、実はあまり医療費について深く考えたことはありませんでした。
というのも、東京都では中学生までは医療費助成制度が受けられ、2023年度には「高校生等医療費助成制度(マル青)」という、高校に就学する年齢の子どもの医療費の自己負担分を助成する制度もあったからです(自治体により助成の条件は異なる)。とはいえ、うちの子が高等部に入学した頃はまだマル青の制度はなかったので、医療費の自己負担が必要になったことで、「あれ…。親亡き後の医療費、うちの子みたいな無収入の障害者はどうするの?」という点について考えるようになったんですね。
そうこうしているうちに、子がもうすぐ18歳になるよ、というタイミングで学校から「マル障手続きのご案内」的なチラシをもらったんです。
そのときに私は初めて、愛の手帳1・2度の知的障害者が利用できる医療費助成制度があるということを知りました。
以前、こちら☟の記事でマル障についてはチラッと触れたことがありましたが。

制度の詳しいところについては、リンク先の頁をよく読んでいただくとして、ひらたく言えばどういう制度なのかというと、うちの子(愛の手帳2度、生活介護事業所で月収1000円以下)は以下のスペックに該当するんですが…
◉愛の手帳1・2度
◉住民税非課税者
以下の表を見ていただくとおわかりかと思うんですが、医療費(保険適用対象)の月の上限が通院・入院ともに「自己負担なし」つまり、ケガが病気での通院はもちろん、精神科の通院や精神薬の薬代金など、これらすべて自己負担ゼロ(0円)で受けられるということなんです…!

これはすごい。
ちなみに、住民税非課税とは、港区のWEBサイトを見ると「前年の合計所得金額が135万円以下(給与収入なら204万4千円未満)の障害者の方は、住民税が課税されません」と書いてあるように、東京都港区の場合は「前年の所得が135万円以下の障害者」がこれにあたります。この収入には障害年金は含まれません。
うちの息子は生活介護事業所で月1000円もらったとしても1年で1万2000円の収入であり、息子は文句なしに「住民税非課税」となるわけですよ。ですから、この制度、本当に素晴らしいしありがたいと思います。
障害年金は1級でも月額10万円ももらえないし、施設やグループホームに支払うお金や生活費などを考えると、何かしらの助成金をもらえたとしても、精神科の通院代と毎日の薬代を支払うことになるとしたら、なかなかの重い負担になるかと思うからです。
なお、上記の記事にも書いていますが、マル障は18歳から利用できますが、20歳未満(つまり18歳~20歳になるまで)は受給資格者本人の所得ではなく、「世帯主の所得」で判断されます。つまり、本人が20歳になるまでは世帯主(うちの場合は夫)の所得が基準となるわけです。うちの場合は所得制限にひっかかるため、対象外でした。
20歳になれば本人の所得で判断されるようになるので、所得制限で引っかかって利用できなかった方も、20歳になるタイミングで手続きするのをお忘れなく。
これ、わざわざ自治体から案内が来たりしませんので。
”マル障”は国民健康保険に加入していることが前提!

えー、じゃあ、愛の手帳の成人更新で1度・2度で更新できたら、医療費については安泰じゃーん!備えなくても大丈夫じゃーん…と思うかもしれませんが、医療費が完全にゼロ円になるわけではありません。
これは健康保険適用の医療に限られるので、例えばですが、入院したときの食費などは適用外として実費が必要になります。
そして、うん、健康保険適用。これですよ。健康保険適用。
あれあれ?健康保険って、そういえばどうなるんだろう、親亡き後は…?ということに思い当たります。
というのも、このマル障という制度。
国民健康保険(もしくは健康保険)に加入していることが前提の制度だからです。
例えばうちの場合は、息子は現在、会社員の夫の健康保険の扶養に入っています。ですから、息子は健康保険料の自己負担は無(ゼロ円)で、マル障を使って医療費の自己負担も無(ゼロ円)ということで利用できているんですが、親亡き後、息子が一人ぼっちになったときは、健康保険どーなるの??と。
実は親亡き後でなくても、夫が定年で会社を辞めて、国民健康保険に切り替わるタイミングで、息子も夫の健康保険の扶養から外れてしまうことになるんですけどね…。
つまり、夫の健康保険の扶養から外れた時点で、息子は国民健康保険に加入しなければならなくなるんです。
え!
国民健康保険の保険料って結構な多額だよね?
障害年金の場合は国民年金保険料の法定免除制度があるので、おそらく重度知的障害の息子は生涯、保険料の自己負担は必要がないでしょう。
国民健康保険も、障害年金みたいな、障害者(もしくは低所得者)の保険料免除制度とかないの?…と私は考えたわけです。
しかし、残念ながらそんな制度はありません😂
法定免除されるのは生活保護世帯だけなんです。
つまり、収入が障害年金しかなかったとしても、国民健康保険料は支払わなければならないんですよね。
もちろん、低所得者には減免の制度はあるので、高所得者のように月々高額の保険料を支払うことはありません。
いくら支払うことになるかは自治体によって異なるようですが、おそらく毎月数千円(5000円未満)は支払うことになるんじゃないですかね。
障害年金しか収入のない息子にとって、毎月数千円の負担は結構大きい。そのため、これは、親亡き後に必ず毎月発生する費用として心づもりしておかなければなりませんね。
なお、きょうだい児がいる方は、親亡き後はきょうだい児の健康保険の扶養に入れることもできます。
数年前に扶養要件の規制緩和で、同居をしていない兄弟姉妹を健康保険の扶養に入れることもできるようになったようです。
精神科の通院なら自立支援医療制度も

ところで、マル障があれば自立支援医療制度は不要なの?と思いますよね。
たしかに、マル障は精神科でも利用可能なので、自立支援医療制度で自己負担がある方(親の所得が高いなど)は、自立支援医療制度ではなく、マル障を使った方がよいかと思います。
自立支援医療制度の利用者負担(自己負担)は、これはマル障とは違って20歳になっても本人の所得ではなく、本人又は属する「世帯」の収入等に応じて…となっており、つまり、うちの場合は夫と息子は同世帯となるので、夫の収入が高いうちは所得制限がかかり続けるということになります。
※同世帯とは、医療保険の加入単位(受診者と同じ医療保険に加入する人)をもって、同一の「世帯」として取り扱うとされています
20歳になったら所得制限が外れる…と考えている方は、これはそうではないのでお気をつけください。

自立支援医療(精神通院医療)について|自立支援医療(精神通院医療)|東京都福祉局
このように、マル障を使えるかどうかで、医療費の負担はずいぶん違ってきますよね。
ですから、愛の手帳の成人更新で、2度と3度のはざまのあたりの方は、医療費の観点からも、なんとしてでも2度が取れるように頑張った方がいいと思います。
頑張るというか、頑張らせない方がいいとでもいいますか😂
うちも15歳くらいまでは頑張ってできることを増やしたり、言語や行動の訓練を頑張ってやってきていましたが、成人更新の直前はそういった積極的な療育のようなことは控えました。
そういうのって何だかな…とは思いますが、医療費以外でも、支援や助成制度は2度と3度の間には凄まじいほどの高い壁があると実感していますので。
こうしていろいろ調べてみると、例えば愛の手帳は3度や4度で、マル障は使えず、仕事ができなくなって障害年金2級の収入しかない…というようになった場合はどうすればいいんでしょうね。
知的障害者の親亡き後には生活保護に切り替える人がいるという話も納得ですね。医療費は生活保護の場合は自己負担ゼロですし。そして障害年金より生活保護の方がもらえる金額が高いんですから。
親亡き後のお金の問題については、また別途、いつか記事にしたいと思います。

