自閉症の息子を犯罪者のような目で見た親子

こちらのブログは「公園は戦場だ。」の続きとなります。

公園は戦場だ。

 

それは「公園の中心でうんこにまみれる」と同じ日、同じ公園でのできごとでした。

公園の中心でうんこにまみれる

つまり、うんこにまみれる前に起きたことです。

そこは敷地面積のかなり大きな公園でした。

広場の中央部にはちょっとしたアスレチック風のジャングルジムがあり、その時その場にいたのは、私と自閉息子・健常息子、それと友達親子の5人だけでした。

しばらくジャングルジムで遊んだところで、友達親子が離れた場所にあるトイレに行ってしまい、入れ替わりに小さな女の子を連れた女性がやってきました。

息子とトラブルが起きたら嫌だな。

向こうは息子より小さいし女の子だし。…と思いましたが、女の子は年少さんくらいかと思われる小さな子で、ジムで遊ぶにはお母さんの手助けが必要。

ママがそばに付き添った状態で遊び始めました。

お母さんが付いているなら大丈夫か。

と少しだけホッとして、私もジャングルジムのすぐそばで息子の様子を監視していました。

すると息子が輪くぐりをしていたところに、反対側から女の子がよじ登ってきているのが見えました。

輪くぐりってこんなやつ

 

こうした輪くぐりは公園によって進行方向が決まっている場合が多く、というのもすれ違うのが大変だったりするからなのですが、一応断っておきますと、息子は進行方向どおりに進んでいました。

そういったことも普段は守らない息子ですが、その日はたまたま守っていた。

 

まあ、そういうローカルルールは置いといても、うちの息子が先に輪くぐりをしているのを見ていたのだから、彼女たちは逆から入らず、息子の後ろから入ればよかったのだと、後から考えると思うのです。

でもその子は対向から輪の中に入ってきた。

小さいけど、活発な子のようだから、すいすいとすれ違えるんだろうな。

そう理解して、私は遠目にその様子を見ていました。

するといよいよ2人が輪くぐりの途中で対面したのですが…。

 

女の子はどちらか端っこによけるでもなく、真ん中で座りこんだままでいるのです。

(すれ違うときはお互い左右に避けあいますよね?)

よく見ると、とても狭い輪なので、すれ違うのはかなりお互いが努力しないとできない状況であることが見てとれました。

女の子はまだ輪くぐりに入ってから1~2mの場所にいるので、通れないのだとしたら、そばに控えているママが降ろしてあげればいいし…と思って見ていたのですが、そこで女の子がこう、言ったのです。

 

「ねえ、そこどいて?」

 

悲しいかな、うちの息子はその言葉の意味がわかりません。

加えて、すれ違えないほど狭く、息子は後退するとしたら10mくらい下がらなければなりません。

すると女の子が苛立ったように

 

「ねえ、どいてよ?」

 

とふたたび息子に声をかけてきました。

困惑する息子、何か怒られているのかと思い、完全に固まって動けなくなってしまいました。

 

「ねえ?なんでどいてくれないの??どいてよ!どいてよ💢」

 

女の子がヒステリックに叫びだしたところで、とうとう息子は怖くなって泣きだしました。

私は初めて、これはただ事ではないと思い、息子の方へ駆け寄っていきました。

すると女の子のママも駆け寄り、女の子を急いでジムから降ろしているところでした。

女の子は激しく泣きじゃくっていました。

そして、女の子を抱きしめながら、

「怖かったね、怖かったね」

…と。

私は女の子のママに頭を下げながら「すみません、どうかされましたか?」とたずねました。

一部始終見ていましたが、「どいて」と言われてどかなかった息子にも落ち度があるわけですから。

すると女の子のママは言いました。

 

「その子に娘がどいてって言ったんですけど!どいてくれなかったんですよ??…怖かったよね」

 

と最後は娘に問いかけながら、私たち親子をまるで犯罪者でも見るような怯えた目で見ているのです。

息子は輪くぐりの中で泣き崩れて動けなくなっていました。

 

「すみません、うちの息子は自閉症で、『どいて』という言葉が理解できないんです。何を言われているのかわからなくて、どけなかったんだと思います。ごめんなさい」

本音を言うと、どうしてうちだけがこうして頭を下げなきゃいけないんだ、息子だって泣いているのに。

そう思ってはいましたが、とにかく怖がらせたことは事実。謝っておこうと、頭を下げました。

でも、女の子のママは一瞬無言になったかと思うと、より一層女の子を抱きしめながら、

 

「怖かったよね。ちゃんと言ったのにね『どいて』ってちゃんと言ったのにね。怖かったよね」

 

私たち親子を気味悪そうに見ながら、その親子はその場から離れていきました。

 

輪くぐりで泣き崩れる息子を降ろし、泣いている息子を抱きしめながら私も一緒に泣きました。

 

子供のように、ボロボロと、泣きました。

 

周りの人みんなが優しい幼稚園に通っていたからか、こんなふうにはっきり悪意をぶつけられたのは初めてだったかもしれません。

世の中には、障害児を偏見に満ちた目で見る人も、一定数いるんだな…と。

こんなことで傷ついていたら、障害児の母親なんてやってられないけど。

 

 

私はしばし子供一緒に涙を流し続けていたのでした。

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