発達障害の子がいる家族は「いびつな家族」なんだ?

出典:pixabay

Twitterにも上げましたが、この記事について書きたいと思います。

姉を殺害した弟 「良かったね」と語りかける母親 法廷で語られる歪んだ“家族の形” (fnn.jp)

姉を殺害した弟 「良かったね」と語りかける母親 法廷で語られる歪んだ“家族の形”

この記事の、まず見出しにすごく悪意を感じる。

こういう記事は本来フラットに書くべきだと思うんですがね。

極悪非道?もしくは頭おかしい?そういう母親像を読者に押し付けていますよね。

私もこのタイトルを見てぎょっとして記事を読んだクチです。

姉を殺したおかしな弟と、それに対して「良かったね」と話しかけるおかしな母親の話だと思って。

けど。

亡くなった女性(被告のお姉さん)は発達障害だったんだそうですよ。

 

この家族は発達障害あるある。特別なんかじゃない。

2020年10月、警察から「交通単独事故」として報道発表された事故。およそ1ヶ月半後、運転していた男が殺人容疑で逮捕された。事故の真相は、弟が、故意に事故を起こし、同乗していた実の姉を殺害した「殺人事件」だった。そして、その裁判が始まった。

高沢翔悟被告(22)は、千葉県・市原市で、車を走行中に、故意に速度を加速させながら、法面へ乗り上げ、電柱に衝突させるなどして、同乗していた実姉の絵里香さん(当時26)を殺害した罪に問われている。

 

この事件はつまり、高沢翔悟さんが姉の絵里香さんを乗せて車を運転していたところ、わざと事故を起こし、その結果姉が亡くなってしまった、ということです。

過失ではなく、わざと事故を起こしているから殺人罪に問われているわけです。

ではなぜ彼はわざと事故を起こしたのか?

高沢被告は両親と姉の絵里香さんと4人暮らし。高校卒業後に勤務していた工場を辞めると仕事はせず、祖母の介護や家事などをしていた。姉の絵里香さんは長年、メンタルクリニックに通い、うつ病や発達障害の診断を受けていた。事件が起きた20年は、仕事をしておらず、家に閉じこもる生活を続けていた。

 

亡くなった姉の絵里香さんは、発達障害の診断を受けていたと、記事にはかなりサラッとですが書かれてあります。そして、

家庭内で、「死にたい」「殺してくれ」「なんで私を産んだの」などと、頻繁に訴えてくる絵里香さん。その度に、母親は落ち込み、それを高沢被告が慰めてくれることもあったとのこと。

これまたサラッと書かれてありますが、おそらく発達障害のあった絵里香さんは、幼い頃から生きづらいと思うことが多かったのでしょうね…。「死にたい」「殺してくれ」と頻繁に訴えていたのだとすると、二次障害を起こしていた可能性もあります。

いずれにせよ、絵里香さんはもちろん、家族もとてもつらかったことだと思います。

うちには重度知的障害を伴う自閉症の息子(現在高校1年生)がいますが、幼児程度の知能しかないながらも「死」という概念だけはあるようで、悲しいことや辛いことがあると、「空に行く」=死にたい とヒステリックに泣きながら叫ぶことがあります。

親として、これほど悲しく、やりきれない思いをすることはありません。

なんとかしてあげたいけど、できないのです。

落ち込む母の姿を見て、弟である被告は優しい人だったんでしょうね。

逃げだすことなく、母と姉の事を思い、心を痛めてきたのでしょうから。

私も、今もなお、自閉症の息子が日々問題行動を起こすことがあり、落ち込むことが多い毎日です。

このまま、もし強度行動障害を起こすようなことがあった日には、最悪、死ぬしかないのかと思い詰めることもあります。

強度行動障害~衝動的に物を壊し暴れる自閉症の息子~

将来を悲観して、思わず号泣してしまう日もあります。

ただ、私は今、太郎を殺したりしていない。でも、この記事に出てきた家族は特別なんかじゃない。

私だっていつ、こういう事が起きてもおかしくないと思う。紙一重なんです。

 

ぎりぎりで生きて魔が差した途端に「殺人犯」呼ばわり

弁護側は「高沢被告は、犯行時、うつ病により、心神耗弱の状態で、価値のない自分と姉は生きているべきでないという狭い思考を抜け出すことが困難だった」と主張。一方、検察側は犯行時、心神耗弱の状態だったことを認めた上で、「大きく責任非難を低減させるものではない」と指摘した。

まあ、そうでしょうね。

責任能力を問うことはできるでしょう。彼はきっと正気だったんです。

でも、ギリギリだったんだと思いますよ。

私もこれまで何度か魔が差す瞬間が訪れかけたことがあります。

もしかしてうちに次男がいなかったとしたら、私は一線を越えてしまったかもしれません。

彼は一線を越えてしまったんですね。

彼らの母親がこう証言しています。

殺人というのは私にはあまり…腑に落ちない。翔悟本人も死にたい気持ちがあり、将来を悲観していた。絵里香も、常々死にたいと言っていた。それを叶えたんだろうと、無理心中で自分もだと思う。

記事には事故を起こした際の車の写真も載っていますが、ぐちゃぐちゃに大破した状態でした。

彼自身、自分も死んでいいと思っていた、つまり心境としては無理心中だったのでは、と私も思うんです。

記事でわかる範囲のことしか述べられないので、もしかしたら姉と弟のあいだには確執があり、深い闇があったのかもしれませんが。

とにかく彼自身も人生に悲観しての行為だったのかな、と。

しかしこれだけの背景があるにも関わらず、この記事は発達障害の子供がいる家庭の悲哀を鑑みることなく、殺人事件、犯行、犯行、と、サラッと殺人犯呼ばわりしていて、いや、それは殺人犯なのかもしれないけども、なんだか単なる家族間の怨恨みたいな扱いになっていることに、かなりモヤッとするんですよね。

 

死んだ娘に「良かったね」と言わざるを得ない母の気持が痛いほどわかる

で、冒頭の姉を殺したおかしな弟と、それに対して「良かったね」と話しかけるおかしな母親の話だと思ったという件。実際はこういうことだったんですね。

 

絵里香が亡くなったことは、もちろん悲しいのは当たり前です。ただ、あれだけ(死を)望んでいたので「良かったね」と言ってあげました。

言葉を絞り出すように、涙声で証言を続ける母親。その姿をまっすぐ見つめていた高沢被告も、時折、袖で顔を拭った。

 

この母親の気持は私は理解できます。

誰だって最初から、自分の子供に対して「死んで良かったね☆」なんて思うわけがない(怒)

そう思わざるを得ないところまで追いつめられていたんでしょう。娘も、母親も。そして弟も。

それくらい、娘は毎日のように「死にたい」と苦しんでいたんでしょうよ。

子供が「苦しい、死なせて」と毎日毎日、呪文のように唱えていたとしたら。

 

”いびつな家族”だって一般市民なんだよ?

でも、母親が死んだ子供に「良かったね」と語りかけるなんて、常識からかけ離れた「歪んだ家族」なんだと。

 

自分の娘でもある絵里花さんが殺害されたにもかかわらず、高沢被告を強く非難することはなく、寛大な処分まで求めていたとは。

 

娘が殺害されたのに息子を非難せずに寛大な処分を求める=おかしな母親。

 

悲劇を生んだ、いびつな「家族の形」を、一般市民である裁判員がどう判断するかが注目される。

 

記者からすると、いびつなんですね、この家族は。

このいびつな家族を、常識的な感覚を持っている一般市民がどんなふうに思うかと。

って、

一般市民って書き方😂

なんかさ、なんかもう、発達障害があって、家族にこういう感情を持たざるを得ない状況はさ、何も好き好んでそうなっているわけじゃないのに、この辛い状況を終わらせたくてやったことを、「いびつな家族の形」と、いびつだと。

対して一般市民か。そーかそーか。

 

なんか悲しい。

 

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発達障害の子がいる家族は「いびつな家族」なんだ?” に対して12件のコメントがあります。

  1. あきこ より:

    この事件知っていたけど、交通事故だと思っていました。こんな事情があったんですね。弟さん、祖母の介護もしていたんですね。お姉さんを殺害しようとした訳ではなくて二人で心中しようとしたと思う。お姉さんのこともお母さんのことも思いやっていたんだろうな。若い男の人なら、自分だけ逃げて失踪する人もいるかもしれない。優しいから弟さん自身も悩んでしまったのかもしれない。哀しい事件ですね。いびつな家族ってイヤな言い方ですね。うちもいびつなのかな?と考えてしまいます。ところで、問題行動と強度行動障害の線引きって、どこかわかりますか?

    1. 稲倉サナ より:

      祖母の介護もされていたようですね。
      まだ若いのに、希望も見いだせないような毎日だったのかな…。
      私は今自分がもういつ死んでもおかしくない年齢にさしかかってきたので半ば諦観とともに生きていますが、20歳そこそこでこんな生活だったらと思うと胸が詰まります。
      これをいびつと言うなら、世の中半数以上はいびつな家族なんじゃないかと思いますけどね。
      問題行動と強度行動障害の線引き、私は頻度や程度かな?と思っていますが、調べたらやはり強度行動障害は診断基準などはないので行政の判断基準によって支援の有無が決まるようですね。
      https://h-navi.jp/column/article/35026602#headline_139940
      うちはスマホなどの電子機器を叩き壊すまでの破壊行動は年に1~2回あるかないかという程度で、普段壊すものは紙や布など、必需品ではないものと決まっています。
      自傷や他害も病院に行くほどのものではないので、今現在は「問題行動」で止まっていますが、接し方を間違えると強度行動障害に発展していくのではとビクビクしながら暮らしています。

  2. おばさん猫 より:

    まさかこのような内容の事件とは
    思っていませんでした。
    ニュースのタイトルからして
    悪質ですね…。

    自分の子供が亡くなって
    心から、本来の意味で「よかったね」なんて
    言う親はいないと思います。
    虐待とかは別ですよ。例外はあるとは
    思いますが…。
    この言葉が発せられた背景、お母様の
    お気持ち、「よかった」にのせられた
    お気持ちを想うと目頭が熱く熱くなります。

    障害を持つ子供の親として
    私はできた親じゃ無いので(^◇^;)
    何度もこの子を道連れに…とか
    自分の手術の際には「このまま
    目覚めないといいのにな」とか
    思いました。
    来月、またちょっとした手術を受けるので
    また思っちゃうのかな。

    1. 稲倉サナ より:

      まったく、このタイトルからこの内容だとは思わなかったですよね。
      まさか発達障害に関することとは夢にも思いませんでした。本当に悪質です。
      この母親の「よかった」の言葉。
      ミュージカル「エリザベート」のなかで、息子のルドルフが亡くなったときに、エリザベートが「今あなたはようやく安らぎを得たのね」と涙を流すシーンと重なりました。
      私も今ちょっと太郎の問題行動がなかなかおさまらず、ブラックな感情に押しつぶされそうな毎日です。
      辛いですよね。こういうニュースを見ると身につまされます。

  3. and hina より:

    こんにちは

    私、タイトルだけしか見てなかったんですけど、う~ん・・・深い。どこまでも深い。
    本当のところは、家族にしかわからない気がします。他人がこの家族のことを理解することはきっと無理だと思う 
    でも、他人に裁かれるのね・・・ 
    発達障害って、人それぞれの困り感があり、それさえも理解されないことも多いし、更に2次障害ってなると家族の力だけで回復させるのは、かなり難しい気がします。家族も一緒に病んでいくことの方が多いし。
    日本って、家族のことは家族で!って感じで、なんとか身内でやろうとしますし、こういうケース・・・行政や医療も動いてくれなさそうですよね・・・ そもそも相談に行くハードルも高いですし・・・ 
    「ヤングケアラー」っていう言葉を最近聞きますけど・・・ 広い意味で弟さんはこれに当てはまる気もするんですけど 
    こういうケースを無くすためには、一体、どうしたらいいんでしょうね・・・ 裁判ではそこまで踏み込んで欲しいな

    1. 稲倉サナ より:

      深いですよね。この家族の、特に亡くなった女性と弟さんの関係は、理解することは難しい。
      でもこれ、普通に裁かれてしまうんですよね。
      裁判員裁判だとしたら、選ばれる人が発達障害に造詣が深いわけでもないだろうし、どういう判決がくだされるのかな。
      いい弁護士さんがつくといいんですが。
      私もなんとなくヤングケアラーを彷彿とさせるな、と思いました。
      こうなる前に女性を救う手立てはなかったのかと。
      …なかったんでしょうね。
      うちの太郎は知的障害があるので様々な支援を受けていますが、それでもやっぱり苦しくてもう逃げ出したい(死んでもいい)と思うことありますから。
      支援をまったく受けられないこの家族はどれほど孤独だったんでしょう。

  4. こー より:

    こんにちは
    家庭の事なんて分からないものですよね。
    物凄く幸せ、幸せうんうん不幸
    物凄く不幸、不幸うんうん幸せ
    考え方は人それぞれだものね。
    人様に迷惑を掛ける人間が家族に居ればやはり大変なんだろう?
    人様❗日本人気にするものね。
    抱え込まず何でも相談してくださいと言う事は、簡単だけど人に話す勇気はなかなかどうして難しい。
    やるせないですね。
    もっともっといろんな現実を分かって貰いたいです。

    1. 稲倉サナ より:

      そうですね。家庭のことはその家庭の中の人にしかわからないものだと思います。
      今日、発達障害ではないんですが、精神障害のある兄と認知症の母のいる女性の記事を読みました。
      https://bunshun.jp/articles/-/49044
      これもまた救いのない話です…。
      事件でもなんでもないので、こういう家庭は結構多いのかなとも思いました。
      助けを求めても、どうしようもないんですかね。さらに暗い気持ちになりました。

  5. 森の中から より:

    どこに送ればいいのかわからず言うのも何なんですが、記者の名前は記されてます。抗議という手もあって。でないと、いつまでもマスメディアには届かないから。

    1. 稲倉サナ より:

      抗議しても「ハイハイ」と流されるのがオチでしょうね。
      何が悪いとも理解できないのではないでしょうか。
      この事件もあまり注目もされていないようですし。
      せめて発達障害に理解のある記者に記事を書いてほしかった。そうすればこんな書き方はしなかったでしょうね。
      というか、亡くなった被害者の名前も誤字(1か所、絵里香を絵里花と誤字あり)で書いてあるくらいですからね。

  6. ママリコ より:

    叔母さんの介護疲れで元警察署長が殺人未遂したの知っています?ここまでの仕事をしてきた方でも、殺めてしまうのだと…。
    凄くダークでも、お姉さんの殺めてしまった弟さんの気持も私は分かります。そしてお母さんの気持も。
    そんな表現したらあかんですか?   
    それが普通やと思いたい。

    1. 稲倉サナ より:

      その事件は知らなかったです。介護疲れは障害児育児疲れと通ずるものがありますね…。
      今回の事件はきっと身内の痴話げんか扱いにされて、「何も殺さなくても」くらいに言われてしまうんですかね。
      この記事だって大して注目もされず、すぐに消えていってしまう。
      世の中にはギリギリのところで生きている発達障害児とその家族は山ほどいるだろうけど、スポットが当たることもなく(当たってほしくもないけど)理解されることもなく、もう無理だと手をあげれば「いびつ」と言われて…救われないですよ。

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